中部大学教育研究17
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否を確認した。親子ボランティアには、いかなる場面においても親子個人が特定されないよう、個人情報の保護を徹底すること、安全面の確保をすること、途中で参加を辞めることも可能であること、その場合不利益を被ることは一切ないこと、本学の保健師課程の教育以外に使用しないことを文書と口頭で説明の上、同意書への署名をもって演習参加の同意を得た。依頼対象親子の選定においては、子どもの年齢ときょうだいの有無を考慮した。また、子どもの発育発達の節目をイメージできるよう、母子保健法で規定されている乳幼児健康診査の年齢も考慮した。できるだけ月齢・年齢の異なる子どもに参加してもらえるように依頼し、学生が様々な月齢/年齢の子どもたちとの触れ合いを通して定型発達として修得した知識を断片的なものから連続した発育発達の理解へと変換することを目指した。きょうだいの有無は母親の育児状況や母親の気持ちに影響を及ぼす項目になる。初めての子育てをしている母親ときょうだいを育てている母親の思いや悩みにある共通点や相違点を実感することで、子どもをもつ家族の健康課題をアセスメントする視点を養うことをねらいとした。ボランティア参加を依頼した母親の多くは、育児休暇を取得中の専門職であり保健師も含まれていた。ふれあいタイムの終了時に設けた感想の発表時間では、ひとりの母親としての思いや保健師に期待する知識や態度を率直に学生に伝えていただいた。保健師という職能を理解している専門職の立場であるからこそ、保健師学生の心に響く言葉で語り、現代社会における育児は不安や困難ばかりではなく、大きな喜びがありその喜びを保健師が共感することの意義を伝える内容であった。4今後の課題親子ボランティア参加型演習プログラムに参加した学生からは、「今まで子どもと接することがなかったので、子どもを知るよい機会となった」「お母さんと話ができて家族の生活がわかった」との声が聞かれた。また参加した母親からは、「大学生と子どもが遊ぶ姿をみて、うちの子はこんなこともできるんだと成長を感じた」「たくさん遊んでもらえて子どもがうれしそうだった」という肯定的な感想をいただいた。今後は学生の子どもに対するイメージや発育発達の理解についての評価や、日常とは異なる空間で多くの学生に囲まれることや時間の拘束など親子の負担についても評価し、プログラム継続のあり方を検討したい。更に、母子保健分野に関する演習プログラムにおいて、親子ボランティア参加型演習のように、早期に親子と実際に触れ合うことにより、学生が子どもの発育発達のイメージをもてることは、臨地実習における初回面接時から親子への具体的な支援を考え実践できることにつながる。そのため、厚生労働省が定める「保健師の求められる実践能力と卒業時の到達目標と到達度」2)に示された支援技術のひとつである継続支援の技術習得に与える影響についても追跡し、演習プログラムの縦断的な成果の検討が必要である。5おわりに本論文では、親子ボランティア参加型演習プログラムの展開について報告した。4コマという限られた学内演習をいかに効果的で実践的なものとするかの検討を重ね構成した演習プログラムである。臨地実習とは異なり、学生が慣れ親しんだ学内実習室で教員のサポート下に行うことができる演習は、乳幼児と接する機会の少ない学生にとって、自身の力を発揮しやすく親子支援の技術に自信を得る成功体験につながりやすい。今後は親子ボランティア参加型演習の効果を多角的に評価し、更なるプログラムの改善を考えていきたい。謝辞子育てに日々お忙しい中、大切なお子様を連れてきてくださり、学生が関わることを許可くださったお母さま方に深く感謝いたします。そして、かわいい笑顔で学生たちを受け入れてくださったお子様方に心より感謝いたします。参考文献1)白石知子(2016):学士課程における保健師教育への選択制の導入,アリーナ,19,375-378.2)一般社団保人全国保健師教育協議会(2013):保健師教育におけるミニマム・リクワイアメンツ全国保健師教育機関協議会版(2013)―80―中部大学教育研究No.17(2017)

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