中部大学教育研究17
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1はじめに本学の保健師教育課程(以下、保健師課程)に選択制が導入されてから、2期にわたる修了生を輩出した。保健師教育はより高い実践力を備えた人材を輩出していくことが求められており、こうした時代の要請は、保健師助産師看護師養成所指定規則や地域における保健師の保健活動に関する指針の改正にも現れている。そこで、本学の保健師課程では、講義科目で学んだ知識と実践とを結びつけ、地域住民を対象とする公衆衛生看護学臨地実習(以下、臨地実習)につなげられるよう、独自の演習プログラムの検討を重ねてきた。本稿ではその一つである母子保健活動に関する演習を紹介する。公衆衛生看護支援論演習の一つの単元である母子保健分野は、保健師活動の基本となるものであり、その技術の修得は重点項目となっている。従来は、学生間で役割交代をしながら行うロールプレイを演習に取り入れ、家庭訪問や健康診査における問診のシミュレーションを行ってきた。しかし、保健師課程が選択制となってからの臨地実習を修了した学生(保健看護学科12期生11名、保健看護学科13期生17名)による教育課程に関する評価において、臨地実習を終えてみると演習時は子どもの発育発達の理解が不十分でありロールプレイを効果的に行えてはいなかったという語りが聞かれた1)。また、臨地実習を通じて学習した子どもの発育発達について「教科書で数字は知っていたが、実習で実際に子どもに会って初めて体の大きさが理解できた」「3歳児がおしゃべりするということはこういうことなのだとわかった」と実感を伴う学びの重さを述べていた。また、「初回面接でやっと子どもの様子がわかったので、支援までたどり着くには厳しいものがある」とも語り、実践力育成に至る段階的な学習の必要性を述べていた。子どもと接する機会が少ない現代の学生にとって、子どもの発育発達はイメージしにくい。そのため、臨地実習で子どもと出会いその姿を目の前にしたときに初めて実感でき、支援を具体的に考えることができるという特徴があるとわかった。そこで、臨地実習以前に行う演習プログラムをより実践的なものとするために、親子ボランティアの協力を得て、学生が学内演習において親子との実際の触れ合いから学習する授業計画を立て実施した。なお、本報告は中部大学倫理委員会の承認を得た(承認番号290090)。2親子ボランティア参加型演習の概要・科目名:公衆衛生看護支援論演習(3年次春学期1単位)・履修学生:16名(全5グループ)―77―親子ボランティアの参加を取り入れた公衆衛生看護学演習プログラムの展開宮武真生子*1・白石知子*2・北野淑恵*3要旨保健師教育課程の科目である公衆衛生看護支援論演習において、親子ボランティアの協力を得て実施した母子保健分野の演習プログラムについて報告する。本プログラムの目的は、学生が学内で親子と実際に触れ合う経験を通じて、子どもの発育発達のイメージを確立し、子どもを育てる親の気持ちや子どもをもつ家族の生活実態に関する知識を得ることである。学生3~4名で構成されるグループ単位で、事前に子どもの発達を促す「子どもとの遊びの計画」や、子育て支援につながる専門職としての「母親へのインタビュー計画」を立案し、当日はグループあたり2組の親子に対して計画した遊びや母親へのインタビューを実施した。「親子ボランティア参加型演習プログラム」では安全確保のための環境整備が必須であり、参加者が満足感を得られることが学生の成功体験につながっていた。今後は親子ボランティア参加型演習の効果を多角的に評価しプログラムの改善を考えていきたい。キーワード親子、ボランティア、演習、公衆衛生看護学、母子保健*1生命健康科学部保健看護学科助教*2生命健康科学部保健看護学科教授*3看護実習センター助手

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