中部大学教育研究17
84/224

この用紙を使用して、毎回の出席の記録と授業参加及び受講態度などを記録しているのである。この用紙は第1回授業の折に各自に氏名などの必要事項を記入させた上で、裏面には自己紹介を書かせて、教師として各学生をよりよく把握できるようにしている。さて、小テストの答あわせが終わったところで、学生たちに①その日の授業の「まとめ」と②質問を、この出席表兼成績管理表に記入させている。この作業には概ね5分をあて、書き終わった用紙を回収して、授業を終了する。そして私は、学生の記入した内容をチェックし、それらに対するコメントを付けて、次回の授業時に返す。私からのコメントはできる限り学生を励ますことを書くようにしているが、多くの学生が共通して抱いた質問や、作品理解のための鍵となる質問には、「GoodQuestion」とだけ書いて、それらの問いへの回答は次回の授業でクラス全体に対して行っている。翌週の授業では、まず前回の授業で出された「GoodQuestion」についての答を明確にすることから始める。具体的には、「GoodQuestion」のリマークをもらった学生たちに挙手させ、その中の一人をあてて、その質問内容をクラスに紹介するように指示する。そして、その問いに対する答を他の学生たちに問いかけ、彼らをディスカッションへと導くようにしている。最終的には、私の解説をもって解答としているが、このように「GoodQuestion」の紹介とそれへの解答を何回か繰り返すことにより、学生に前回の授業内容を思い出させることができる。そして前回の授業における重要点を確認させると同時に、その回の授業への導入をスムーズなものとするのである。このような間接的な質疑応答の形式をとる理由は、60名前後というクラスの大きさと、日本人学生に特有の受身な授業態度による。このサイズのクラスで質問の有無を問いかけても、容易に質問者が出てくるわけではない。というのも、他人と違う行動をとって目立ちたくないという傾向が顕著な昨今の学生は、自ら進んで質問をすること、そして意見を発表することを躊躇するからである。そこで、授業の終わりに、その日の重要点をまとめさせ、質問を書かせているのである。勿論、よい「まとめ」を書いた者、「GoodQuestion」を発した者には、それに対する平常点を与え、成績評価の際に考慮するということを、最初にクラス全体へ伝えておく。そういうわけで、平常点でプラス評価をもらいたいという動機もあり、学生たちは相応な真面目さをもって「まとめ」や質問を書く作業に取り組んでいる。また、翌週の授業の冒頭で、「GoodQuestion」をもらった学生は手を挙げるように呼びかけると、他の学生に同じ質問を先に言われないうちに、自分がそれを発表したいという意欲から、学生たちは競って挙手するのである。しかも、教師から「GoodQuestion」とすでに認められており、見当違いなことを言って「恥をかく」恐れもないので、ためらうことなく、安心して挙手する。「GoodQuestion」への解答の後は、「まとめ」として注目すべき意見を書いた学生をあてて、その意見をクラスへ紹介させている。さらに、押さえておくべき重要事項について、私自身の解説を付け加えて、作品の一つのセクションの学習を終える。そして、さっそく次のセクションの学習へと入っていくが、その際には小テストの配布、映画の視聴、小テストの解答、出席表兼成績管理表への「まとめ」や質問の記入という上述の手順を繰り返していく。さらに、同じ作品についての2回目以降の授業では、上記の活動に加えて、学生同士による原作からの抜粋場面の読み合わせも取り入れている。すでに映像で見て、さらに解説も聞いて理解している部分から選択したシーンを、学生同士で読み合うのである。この場面の選択については、作品の特徴を伝えるシーンを選ぶことにしている。例えば、『ロミオとジュリエット』では、例の有名なバルコニーの場面から抜粋した資料を配布して、学生同士のペアでロミオとジュリエットの恋のシーンを朗読しあうのである。資料の台詞は、日本語版と英語版を併記したものを配布している。実際の授業の場では、英語版の台詞については、学生は指導なしではうまく読めないので、教師の読んだ後にリピートした上で、朗読に臨む。それも、1回のリピートだけでは無理なので、彼らは2,3回のリピートを行った上で読み合わせに挑戦するのである。日本語版の台詞についても、学生は照れてしまってなかなか読めないので、ここでも教師の読んだ後にリピートをして、その後でペアごとに朗読をしている。この活動を観察していると、最初は非常に消極的であった学生がだんだんと朗読を楽しむ様子が見て取れる。この活動を授業に取り入れているのは、演劇はテキストとして存在するのではなく、声と身体を使ってのperformingartsであり、それを受け取る側も感覚を駆使してあたるべきだと考えるからである。学生にも、シェイクスピアの台詞の面白さは、それを音読してこそ初めて分かるものだと実感してもらいたい。そして90分の授業の間、学生にはできるだけ多くの活動を行なわせたいという思いもある。実際のところ、この台詞の読み合わせは彼らの気分転換にもなっており、積極的な授業参加を好む傾向の強い英語英米文化学科の学生の気質に適した活動といえる。4素朴ではあるが本質を突く学生の質問前述のように、毎回の授業の終わりには「まとめ」―70―中部大学教育研究No.17(2017)

元のページ  ../index.html#84

このブックを見る