中部大学教育研究17
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た学生は、早期離床の大変さを目の当たりにして受け持ち褥婦に対して、開腹手術と分娩後の両方のケアが必要とされるという特徴を捉えることができていた。また、『褥婦さんたち』という表現から、受け持ち褥婦以外にも目を向け、広い視点で褥婦を捉えることができていたと考える。また、帝王切開を手術ではなく、分娩方法の1つであると捉えることができた学生もいた。これは教員が学生の帝王切開見学前後に助言や振り返りを十分に行ったことにより、このような理解につながったと考える。帝王切開の入院期間は経腟分娩の入院期間より長いため、受け持ち期間が経腟分娩よりも2~3日長くなる。よって、技術や母児への直接的な関わりが繰り返し体験でき、黄疸や因子について具体的に述べることができており、アセスメントの視野が広がっていると考える。そして、母性看護の最大の特徴のひとつである誕生の喜びを理解すると同時に、痛みや不安の中で育児をしている母親の様子から、喜びばかりではない側面にも着目できていた。これは、帝王切開分娩では入院期間が長いため、空間や時間を受け持ち母子と共有することが多く、コミュニケーションがしっかりとれているからこそこのような特徴があらわれたのではないかと推測する。特徴表現の結果から、指導や退院後の継続ケアの必要性やセルフケアの必要性を感じることができていたと考える。8結論母性看護学臨地実習における現行の教授方法や指導体制における課題を検討するために、受け持ち対象者の分娩様式の違いが学生の学びに及ぼす影響を比較検討した。その結果、受け持ち褥婦が帝王切開分娩であっても、妊・産・褥婦および新生児の生理的な特徴、生理的変化を正常に維持する援助に必要な看護過程の展開を理解し、心身の変化に対応した看護ケアを実践できるという実習目標は十分達成できていると判断できた。また、学びの内容には受け持ち褥婦が経腟分娩と帝王切開分娩でそれぞれに特徴があることが明らかになった。したがって、分娩様式に特徴的な学びを互いに共有させる必要があり、異なる分娩様式の褥婦の経過やケアについて、カンファレンス等の場を活用し、学生自身にもっと語らせ、学生間での学びの共有を促す指導の工夫が必要であると考える。また、帝王切開を手術ではなく分娩と捉えることができている学生もおり、指導者や教員の指導は評価できると考える。このように帝王切開も分娩のひとつの形であると捉えることができる指導は引き続き必要であると考える。謝辞本研究にあたり、ご協力いただいた学生の皆様に感謝の気持ちを申し上げます。本研究は2015年度中部大学特別研究費(CP)による助成を受けて実施した。文献1)神谷克也(2017).「わが国の母子保健」.『母子保健事業団』.P.182)前掲書1).P.423)厚生労働省(2017).医療機関における分娩件数と帝王切開手術割合の年次推移http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/130-28_2.pdf[2017.8.12アクセス]4)杉浦絹子,原田さゆり,葉久真理,池内和代,古礒祥子,久保田君枝(2017).「助産師教育課程入学制の看護師教育における母性看護学実習の実施状況」.『日本助産学会誌』,30(3),6505)田久浩志,林俊克,小島隆矢(2008).第10章テキストマイニング,JMPにおける統計解析入門第2版,pp.272-273,東京:オーム社―64―中部大学教育研究No.17(2017)

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