中部大学教育研究17
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時に受け持つ。母性看護学臨地実習の目的は、女性の健康の維持・増進と健康回復における看護の役割をとらえ、各ライフサイクルにある女性、特に妊娠・分娩・産褥期の女性と胎児期を含む新生児の健康を目指した看護が実践できる基本的な知識・技術・態度を習得することである。計6施設に学生を配置している関係上、各施設の特性にも考慮しながら実習を行っている。また、学生数と同数の正常分娩後の受け持ち対象者がいない場合は、担当教員は学生2人1組のペアで1組の母子を受け持たせたり、異常分娩に位置づけられる帝王切開後の母子を受け持たせたりするなどして、看護過程を指導している。3研究目的実習記録内の「母性看護学臨地実習を通して学んだ母性看護の役割」を質的に分析し、本学の母性看護学臨地実習における受け持ち分娩様式による学生の学びの内容を比較検討する。分析結果から、実習目標の到達について、また現行の教授方法・指導体制における課題を検討することである。4教育上の貢献分析対象とする実習記録の「母性看護学臨地実習を通して学んだ母性看護の役割」は、学生が実習全体を俯瞰して、臨床での看護実践を通して何を学んだのか、今後どう活かしていくのか等を自由記述するもので、学生の内面的成長を示す資料でもある。本研究では、その内容を施設特性や学生の個別性の観点から質的に分析することで、テキストデータから具体的課題を見出す。したがって本実習の学習効果をあげるための改善策を具体的に検討することで、効果的な教授方法の検討や実習施設との調整に役立ち、母性看護学臨地実習における学生の学びの質を高めることができる。5方法5.1対象者と調査期間平成26年9月から平成27年7月までに母性看護学臨地実習を終了し、書面で研究参加への同意が得られた中部大学保健看護学科4年生113名(7期生)のうち、褥婦を受け持った学生109名であった。対象学生の内訳については表1に示す。5.2データ収集及び分析方法母性看護学臨地実習後に提出した「母性看護学臨地実習を通して学んだ母性看護の役割」(自由記述)の内容についてテキストマイニングを用いて分析した。テキストマイニングとは、ある文の中にある単語が出現するか否かという確率や、ある単語と別のある単語が同一の文に共起する確率などの言語現象を導き出すことである5)。本研究では、TextMiningStudioforWindowsver5.0を用いて定量的言語解析(特徴語抽出・特徴表現抽出)をした後、質的に分析し、学生が本実習でどのような学びを得ているかを受け持ち褥婦の分娩様式の違いに着目し、実習目標と照らし合わせて検討した。具体的には、頻出している言語が持つ本来の意味を検討するために単語頻度解析と係り受け解析を行い、適宜原文検索を行った。また、分娩様式ごとの具体的な学びの違いを検討するために、特徴語抽出(属性毎に特徴的な単語を抽出)や特徴表現抽出(構文解析で得られた係り受けの情報を元に属性毎に特徴的な係り受け表現を抽出)をFisherの直接確率を抽出指標として行い、統計学的に有意差(p<0.05)がある単語を中心に原文検索を行った。5.3倫理的配慮分析は母性看護学臨地実習の成績評価後に行った。研究への参加の有無が学業成績や単位取得に影響しない旨を説明書に記載し、口頭でも説明した後、書面で同意を得た。なお、本研究は中部大学倫理審査の承認(No.270072)を得て実施した。6結果対象者109名の記録を分析した結果、総文章数は2,917文章、総文字数は37,427語であった。以下、有意差がある単語は『ゴシック体』で、原文検索して確認を行った発言内容は「」で表記した。6.1経膣分娩の褥婦を受け持った学生の学びの特徴語と特徴表現特徴語抽出を行った結果、経膣分娩の褥婦を受け持った学生(79名)に特徴的に出現し、有意差が認められた単語は『領域』『特徴』『痛い』『雰囲気』『応じる』『動く』『病気+ない』『注意』であった(図1)。『領域』『特徴』という単語は経腟分娩を受け持った学生に特化しているわけではなく、母性看護臨地実習全体を示す原文検索結果であったため、それらを除―60―中部大学教育研究No.17(2017)表1対象学生の内訳

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