中部大学教育研究17
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1はじめに少子化による分娩件数の減少1)と、ハイリスク分娩の増加2),3)により、母性看護学臨地実習において1人の学生が正常経過の産褥期の母子を受け持つ機会も減少傾向にある。そのため看護学生であっても、異常分娩に位置づけられる帝王切開後の母子を受け持たせたりするなどして、看護過程を指導している教育機関も少なくない4)。本学保健看護学科の学生は、臨地実習として生活援助実習、看護過程実践実習を経験し、3年次秋学期より各専門領域での応用実習を履修する。母性看護学臨地実習はこの応用実習に位置づけられ、学生は母性看護学Ⅰ・母性看護学Ⅱで修得した知識・技術に基づき、実際の臨床で母性看護の対象へ看護を展開する。しかし、前述したように昨今の周産期医療ならびに母性看護特有の臨床現場の状況ゆえに、効果的な教授方法を見直す必要性が生じている。教員は、状況に応じて学生間および臨地実習指導者と随時調整を行っているが、学生の受け持ち対象者の選定にあたっては苦慮している。その理由は、例えば、外科の周手術期看護であれば手術予定者から受け持ち患者を予め選定することができる。しかし、分娩は他科における疾病や手術とは異なり、臨地実習の開始前に対象者の選定を行うことができない。したがって、学生の実習スケジュールや受け持ち対象の分娩様式や産褥日数を均等に調整することが困難になっており、到達目標の基準を受け持ちの状況によって若干変更し、成績評価せざるを得ない場合も出てきた。このように、受け持ち対象を均等に調整することが困難な状況の中、母性看護学の基本的な知識・技術・態度を習得させるために、臨地実習における効果的な教授方法を検討する必要性があると考えた。2本学の母性看護学臨地実習の概要本学科の母性看護学臨地実習では、2週間の実習期間の中で、産褥期にある母親とその新生児の2人を同―59―受け持ち対象者の分娩様式が母性看護学臨地実習における学生の学びに及ぼす影響-テキストマイニングを用いて-岡倉実咲*1・横手直美*2・山下恵*3・橋本妙子*1要旨少子化による分娩件数の減少とハイリスク分娩の増加のため、異常分娩に位置づけられる帝王切開後の母子を受け持たせたりするなどして、看護過程を指導している教育機関も少なくない。そこで、本学の臨地実習における受け持ち分娩様式による学生の学びの内容を比較検討し、現行の教授方法や指導体制における課題を検討した。学生109名が記載した「母性看護学臨地実習を通して学んだ母性看護の役割」の内容をTextMiningStudioforWindowsver5.0を用いて定量的言語解析した後、学生が本実習でどのような学びを得ているかを受け持ち褥婦の分娩様式の違いに着目して質的に分析し、実習目標と照らし合わせて検討した。その結果、経腟分娩の褥婦を受け持った学生は、他の看護学臨地実習との比較から母性看護学特有の対象や看護の特徴を理解していた。一方、帝王切開の褥婦を受け持った学生は、開腹手術と分娩後の両方のケアが必要とされるという帝王切開分娩後の特徴を捉えることができ、受け持ち期間が長いからこそ、看護技術や母児との直接的な関わりを繰り返し体験ができており、指導や継続ケアの必要性やセルフケアの必要性を感じることができていた。以上から、受け持ち褥婦が帝王切開であっても実習目標は十分達成できていると判断できたが、学びの内容には特徴があることが明らかになった。キーワードテキストマイニング、母性看護学、臨地実習、分娩様式、学生*1看護実習センター助手*2生命健康科学部保健看護学科准教授*3生命健康科学部保健看護学科講師

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