中部大学教育研究17
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は中国13名、韓国3名である。全体の流れは準備段階としての読解および要約スキルに関する授業、ピア・ラーニング、内省の質問紙記述、評価の質問紙記述の4段階に分かれている。2.1準備段階学期当初より読解の授業を行い読解文の内容を徐々に向上させた。その後、要約スキルを提示し、要約例を示した。この段階では学習者は教師からのインプットを受けるのみでアウトプットはない。次に新たな読解文を提示し、学習者各自に要約文を書かせた。ここで学習者は個別にアウトプットする。1回目の要約文に対しては個別に添削し返却した。次に新たな読解文を提示し2回目の要約文を書かせた。そのうち2名の要約文を例に挙げ、クラス全体で話し合いながら推敲させ教師が添削例を示した。その後、各自の要約文と比較させた。学習者も添削に参加し考えることによって要約スキルを再確認し注意点を意識することができた。2.2ピア・ラーニング新たな読解文を提示し、各自3回目の要約文を書かせた。なお、使用した読解教材は一橋大学留学生センター(2014)『留学生のためのストラテジーをつかって学ぶ文章の読み方』の「消費者の求めているもの」で、約1,300字の文章を200字程度に要約する課題を提示した。各自が要約文を書き終えた後、学習者を4名ずつのグループに分け、話し合いののち、グループとしてのよりよい要約文(以下、グループ要約)にまとめて提出するという課題(以下、グループワーク)を与えた。学習者はピア・ラーニングによって課題を遂行させるため、準備段階での個別アウトプットから集団でのアウトプットに展開することになる。話し合いの方法、課題達成までの手順については各グループに任せ、教師はほぼ介入しなかった。2.3内省に関する質問紙記述各自に自らの要約文とグループ要約を提示し、両者を比較、検討させた後、内省に関する質問紙に記述させた。質問内容は以下のとおりである。・グループ要約を書く際、どんな手順で行いましたか。・グループで書いた要約文の方がよくなっているのはどの部分ですか。・グループワークを行って、他のメンバー(以下、ピア)からどんなことを学びましたか。言葉の意味、本文の大切な部分、まとめ方、文型、助詞など具体的に書いてください。2.4評価に関する質問紙記述グループワークについて評価させ、日本語力向上への有効性について検討する質問紙に記述させた。質問内容は以下のとおりである。それぞれ1つにチェックしその理由を記述させた。・このような学習方法はいいと思いますか。()いいと思う。()どちらとも言えない。()いいと思わない。その理由を書いてください。・このような学習方法で日本語力がアップする(今回は1人で書くより、いい要約文が書けた)と思いますか。()アップすると思う。()どちらとも言えない。()アップすると思わない。その理由を書いてください。・このような学習方法をまたやってみたいと思いますか。()やりたいと思う。()どちらとも言えない。()やりたいと思わない。その理由を書いてください。3要約の変化1人で書いた要約文とグループ要約に最も顕著な差(向上)がみられた学習者Aの文章とそのグループ要約を例として示し、どのような変化があったか検討する。①学習者Aの要約文(原文のとおり)「高度経済成長期が終わるころまでに、日本の消費者は、バブル期に必要のないもの、高額なものを買う傾向にあった。しかし、バブル崩壊後、市場は完全な買い手市場になった。現在、消費者が商品を選目はますます厳しくなっている。消費者の買い物をめぐる状況は、近年急速に変化しているのである。新しい方法を考えしている。」②学習者Aのグループ要約(原文のとおり)「高度経済成長の後、小売店はものを買わない消費者に買わせるために様々な方法を考えはじめている。大きな駐車場を持ち、消費者が手軽に買いに行ける郊外型の大型ディスカウント店や24時間営業するコンビニや流通コストのかからない通信販売とインターネット・ショッピングが利用されるようになった。このように消費者が商品を選ぶ目や市場はどんどん厳しくなっている。そのために変化にあわせた様々な方法を考えるべきである。」①と②を比較すると、まず、200字程度の要約という課題に対して、①の150字から②の198字に増え、より課題に合ったものになっている。①では高度経済成長の後とバブル期の内容が混在し意味が通っておらず、―54―中部大学教育研究No.17(2017)

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