中部大学教育研究17
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1はじめに3学科体制であった国際関係学部を、2016年度より、3学科の垣根を取り払い、1学科体制による新たな国際関係学部をスタートさせた。それに伴い、新しいカリキュラムを組む必要に迫られることとなった。これまでの3学科でおこなわれていた科目を統合した新たな科目の設定を迫られ、さらに学生の要望に沿ったかたちのオーダーメイドに近い科目の開設のため、学部の所属教員が長きにわたり議論を重ねることとなった。本稿は2016年度秋学期に開講された「ハイブリッド・プロジェクトA」(1単位、選択)について、概要と具体的な内容を伊藤正晃が、また、その成立の経緯を中山紀子が述べる。2「ハイブリッド」へのこだわり「ハイブリッド」という言葉を科目名に入れることにこだわった。そもそも、ハイブリッド(hybrid)には「交配種、雑種、混血」といった訳が充てられているが、語源は古代ギリシア語の「暴力」を意味する(hubris)からきている。当時の「ハイブリッド」には「純血でない、不純の」といったマイナスイメージをもった語彙であったと推測できる。また、もし「ハイブリッド」という語彙がローマ帝国の支配下にあったギリシアで誕生したとすると、「暴力」を意味する「ハイブリッド」が雑種のような意味で用いられることは容易に推測ができる。しかし、現在では「ハイブリッド」が好まれて使われる。しかも、「ハイブリッド」であるほうが、混じりけのないものよりも素晴らしいものであるとさえ感じるほどの勢いだ。国際関係学部では、学生と学生、教員と教員、学生と教員の混合により、昨今叫ばれているハイブリッド効果を狙うことに力点を置くこととなった。3学科が統合されたことで、各学科の教員間の壁も取り払われた。そこで、各学科が連携して、それぞれの特徴を活かした科目づくりに焦点が当たった。案として挙がったのが、学科の教員が複数人で担当する「ハイブリッド」形式の授業スタイルであった。1つの教室に同時に複数の教員が会する授業スタイルは斬新であるとともに、専門分野の異なる教員同士が、ある事柄に対して意見を交わすことで、学生に対して様々な角度からの捉え方が可能であるということを、授業の中で伝えていくことができ、また、学生からの多様な質問に対して、ピンポイントで教員の専門分野にヒットしなくても、複数の教員が補完しあうことで、学生を的確に指導することが可能となる。このような考えから、国際関係学部は複数教員が同時に1つの授業を担当する「ハイブリッド」形式のスタイルを採用した。3「ハイブリッド・プロジェクト」の構築「ハイブリッド・プロジェクト」を構想する際、いくつかの案が上がった。―45―ハイブリッド・プロジェクト始動!-国際関係学部の新たなる挑戦-中山紀子*1・伊藤正晃*2要旨中部大学国際関係学部では、2016年度秋学期に「ハイブリッド・プロジェクトA」の授業が始まった。新しく生まれ変わった国際学科の新しい授業である。複数の教員が学生たちと車座になるため、通常の講義形式とは異なり、教壇がない。興味や疑問のある事柄を発表したい人が授業で発表し、残りの教員や学生がその事柄に対して議論をするという方法である。手探りで始めた授業であったが、結果的に参加した教員も学生も非常に満足した授業となった。キーワードハイブリッド、プレゼンテーション、議論、即興性、国際学*1国際関係学部国際学科教授*2国際関係学部国際学科講師

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