中部大学教育研究17
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2次の交互作用および受講状況と時期の交互作用は有意ではなかった。以上のことから、オンデマンド講義の利用申請を独立変数に用いた場合には、仮説1および2を支持する結果は得られなかった。仮説検証には直接関係しないが、従属変数の種類によらず、事前の授業力と時期の交互作用、事前の授業力の主効果が有意あるいは有意傾向であった。また、授業運営評価スコアを従属変数としたときにのみ、時期の主効果が有意だった。効果の方向性はFDプログラム受講の総合効果の場合と同様だった(Fs>3.55,ps<.10,η2ps>.01)。この他の主効果および交互作用は有意ではなかった。各群の平均値および標準偏差はTable10に示した。Table10授業評価スコアのMとSD(オンデマンド講義)3.10Cumocの効果Cumocの利用状況で群分けを行った場合、いずれの評価スコアを従属変数としたときにも、2次の交互作用および受講状況と時期の交互作用は有意ではなかった。そのため、Cumocの利用を独立変数に用いた場合、仮説1および2を支持する結果は得られなかった。仮説検証には直接関係しないが、従属変数の種類に関わらず、事前の授業力と時期の交互作用、時期の主効果、受講状況の主効果、事前の授業力の主効果が有意あるいは有意傾向であり、効果の方向性はFDプログラム受講の総合効果の場合と同様だった(Fs>3.03,ps<.10,η2ps>.01)。この他の主効果および交互作用は有意ではなかった。各群の平均値および標準偏差はTable11に示した。Table11授業評価スコアのMとSD(Cumoc)4考察4.1FDプログラム受講の効果(目的1-1)本研究では目的1-1として、準実験の不等価統制群事前事後テストデザインを用いて、中部大学で実施しているFDプログラムの効果について検討した。中部大学では、7種類のFDプログラムを実施しているが、3年以内にこの内の1回以上に参加した受講群の教員は、未参加であった統制群の教員に比べ、3年間で生じた授業運営評価スコアの伸びが大きかった。これは受講効果についての仮説1に沿う結果であり、FDプログラムの受講は授業運営に関わるスキル及び態度を向上させる効果を持つことが示唆された。続いて、7種類のFDプログラム別に受講の効果を検討した結果、キャリアアッププログラムと授業サロンにおいて受講の効果が見られた。一方、FD講演会、全学公開授業、オンデマンド講義、Cumocではいずれの従属変数においても受講の効果は見られなかった。このようにプログラムの種類によって受講の効果が異なっていた理由としては、プログラムの内容が影響している可能性が考えられる。Table2で示したようにキャリアアッププログラムは、普段の自分の授業内容と関連付けながら、授業運営に関わるスキルを実践的に学んでいくというワークショップ形式のプログラムであり、授業サロンは、異なる学部に所属する5人の教員でグループを作り、お互いの授業を参観してピアコンサルティングを行うというプログラムである。これらは中部大学で実施中の7種類のプログラムの中でも受講者に高い関与を求める形式になっており、新しい知識の獲得を促すと共に、自らの授業内容について深く内省するきっかけを受講者に提供する。このように自己に関連付けた深いレベルの情報処理が促されたことで、カークパトリック・モデルのレベル3以上に該当するような行動レベルの変容が受講者に生じやすかったと推測される。一方、FD講演会、全学公開授業、オンデマンド講義の受講は、新しい知識を得るきっかけにはなるものの、高い関与を必要とせず、受け身で表層的な情報処理に留まりがちな側面も持っている。そのため、満足度や知識の増加など、カークパトリック・モデルで言えばレベル1~2の効果に留まったのかもしれない。なお、事前に行った分析により、キャリアアッププログラムと授業サロンの受講群は、教員の事前の授業力が統制群に比べて高い傾向が見られた。このため、この2つのプログラムの受講者は元々授業改善に対する動機づけが高く、その結果、受講の効果が検出されやすかった可能性も残る。しかし、授業力が元々高い教員は動機づけが高く、その結果として受講の効果が生じやすいのであれば、個人差を含めた2次の交互作―28―中部大学教育研究No.17(2017)

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