中部大学教育研究17
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2.5事前の授業力の算出方法と群分け方法本研究では、仮説2を検討するために、各教員が元々備えている「授業力(魅力的な授業を実施するための総合力)」を個人差変数として扱う。各教員が元々備えている授業力の指標としては、教育活動顕彰制度のための基礎資料として大学教育研究センターが毎年算出している教員別の「授業評価ポイント」を利用した。この授業評価ポイントは、学生による授業評価の10設問(Table1)の中で、総合評価に該当する「設問8:この授業は総合的に魅力的な授業でしたか」のスコアを3倍に重みづけ、教員の授業運営能力を多面的に評価する設問1~7のスコアと合計したものを、15点満点になるように換算したものである(詳細は、以下のURLの「教育活動顕彰制度」に掲載した「実施要領(別表1)」のPDFを参照:https://www.chubu.ac.jp/fdp)。本研究では各教員を前年度(2013年度)の授業評価ポイントの平均値(12.61点)で上位群と下位群に分割し、前者を授業力高群(185名)、後者を授業力低群(164名)とした。3結果3.1プログラムの受講者数と平均参加回数2014~2016年度の3年間に中部大学で実施したFDプログラムについて、受講群と統制群の人数および平均受講プログラム数を算出した(Table3)。分析対象となった教員の47.28%が3年間で①~⑦のいずれかのFDプログラムを1回以上受講していた。受講群は平均して3年間で1.96種類(SD=1.33)のプログラムを受講し、①~⑤までのFD研修の3年間の平均受講回数は4.46回(SD=6.47)であった。プログラム別に見た場合、①FD講演会(33.81%)、③キャリアアッププログラム(17.48%)を受講する教員が比較的多く、②全学公開授業(5.73%)、④FDカフェ(9.46%)、⑤授業サロン(7.45%)、⑥オンデマンド講義(7.16%)を受講する教員は1割未満に留まった。3.2受講群と統制群の事前の授業力FDプログラムの受講は教員の自由意思に任されていたため、教員は受講群と統制群に無作為に割り当てられてはいない。本研究の分析対象者はすべて中部大学の常勤の教員であり、学歴および教育歴等の等質性は全般的に高いと考えられるが、授業力が高い教員がFDプログラムの受講に特に積極的だった可能性や、授業力が低いがゆえに、かえってプログラムの受講が促された可能性は残る。そこで受講群と統制群の元々の授業力に違いがあるかを確認するために、2013年度の授業評価ポイントを従属変数として対応のないt検定を行った。その結果、FDプログラムのいずれかを1回以上受講した受講群と、1回も受講しなかった統制群の間に有意な差は見られなかった(t(347)=0.31,ns)。続いて、プログラムごとに受講群と統制群の比較を行ったところ、④FDカフェ(t(347)=1.90,p<.10)と、⑤授業サロン(t(347)=2.54,p<.05)のみで群間に有意あるいは有意傾向の差が見られ、受講した教員は、受講しなかった教員に比べて元々の授業力が高い傾向があった。それ以外のプログラムに関しては、授業力が高い教員が受講群に偏る傾向は見られなかった。3.3FDプログラム受講の総合効果FDプログラム受講の総合効果について検討するために、FDプログラムの総合的な受講状況で群分けを行い、2(FDプログラムの総合的な受講状況:受講・統制)×2(授業評価スコアの測定時期:事前・事後)×2(事前の授業力:高・低)の3要因混合計画で分析を行った。従属変数は、授業評価スコアの下位因子である授業運営評価スコアと学習促進評価スコアを用いた。授業運営評価スコアを従属変数にした場合、個人差変数を含む2次の交互作用は有意ではなかったが、受講状況と時期の交互作用に有意傾向が見られた(F(1,345)=3.67,p<.10,η2p=.01)。受講状況の各水準で時期の単純主効果を検討したところ、受講群のみで事後に授業運営評価スコアが上昇していた(受―24―中部大学教育研究No.17(2017)Table3プログラム受講者数と平均参加回数(N=349)

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