中部大学教育研究17
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現時点では、FDプログラムの効果の検出に最適と考えられる従属変数の測定間隔が不明であり、探索的な検討が必要になる。そこで本研究では、受講から3年以内に生じる受講の累積効果に焦点を絞って報告を行い、他の測定間隔で生じる効果については続稿で報告する。また、本研究では、以下の2点を研究の目的とする。FDプログラムの受講効果の検証:本研究では、成熟などの外的要因の影響を可能な限り排除するために、不等価統制群事前事後テストデザインを用いて、中部大学で実施中のFDプログラムの受講効果を検証する(目的1-1)。まず、中部大学に在籍中の全教員を、「中部大学のFDプログラムを過去3年以内に1回以上受講した教員(受講群)」と、「1回も受講しなかった教員(統制群)」に分ける。そして、受講群と統制群で、この3年間に生じた授業評価スコアの変化量を比較する。そして、受講効果に関する「仮説1(プログラムの受講状況×評価の測定時期の交互作用が見られ、授業評価スコアの伸びは統制群に比べて受講群で大きい)」を支持する結果が得られれば、FDプログラムの受講効果は存在すると考えられる。なお、本研究では、受講したFDプログラムの内容と生じた効果の対応関係についても併せて検討する。Postareffetal.(2007)の研究のように、近年では、どのような条件で、どの種類のプログラムを受講したときに、どの領域で効果が見られるのかという具体論に関心が集まっている。そこで、FDプログラムの種類と評価領域別に効果検証を行い、受講の効果が特に出やすい条件を探索的に明らかにする(目的1-2)。個人差変数の調整効果の検証:本研究では、各教員が元々備えている授業力(魅力的な授業を実施するための総合力)を個人差変数として用いることで、プログラム受講の効果が特に強く見られる教員のタイプを特定する(目的2)。大同工業大学で実施された評価研究では、事前の授業評価が低い教員で授業評価の上昇率が高いことが示された。そこで本研究では、上記の知見に基づき、個人差変数に関する「仮説2(プログラムの受講状況×評価の測定時期×事前の授業力の2次の交互作用が見られ、事前の授業力が高い教員より低い教員で、授業評価の伸びが統制群に比べて受講群で大きくなる傾向が強まる)」を検討する。仮説2を支持する結果が得られた場合、FDプログラムの受講効果は個人差変数である事前の授業力によって調整されると考えられる。2方法2.1分析対象者過去3年間(2014~2016年度)に中部大学で実施したFDプログラムの効果を検証するために、対象期間の前年度(2013年度)から最終年度(2016年度)終了時までの全期間にわたり中部大学に常勤として在籍し、担当科目を1科目以上持ち、その科目のいずれかに対して1名以上の学生から授業評価を受けた教員349名を分析対象とした。2.2研究デザイン2(FDプログラムの受講状況:受講・統制)×2(授業評価スコアの測定時期:事前・事後)×2(事前の授業力:高・低)の3要因混合計画でFDプログラムの効果検証を行った。プログラムの受講状況と事前の授業力は参加者間、測定時期は参加者内要因であった。従属変数には、学生による授業評価スコアを用いた。2.3授業評価スコアの算出方法と測定時期中部大学では、学生による授業評価を、Webおよび携帯電話・スマートフォン入力形式で、各年度につき2回実施した。授業評価は「教員は授業時間を守りましたか」などの計10設問で測定し(Table1)、いずれも「そう思わない:1点」から「そう思う:5点」の5件法で回答を求めた。授業評価は授業科目別に集計されるため、本研究では、1人の教員が1年間に担当する全授業科目に対する授業評価の平均値を設問ごとに10種類算出し、当該教員のその年度における授業評価スコアとした(回答および集計方法の詳細は西川(2014)と、以下のURLに掲載した「授業評価実施要領」のPDFを参照:https://www.chubu.ac.jp/fdp/)。Table1学生による授業評価で使用した設問―22―中部大学教育研究No.17(2017)

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