中部大学教育研究17
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14)イギリスの高等教育研究情報センター(CentreforHigherEducationResearchandInformation:CHERI)が2007年、1992年の大学教授職国際調査と比較するために、イギリス国内の1,700名規模の高等教育機関の教員対象に行った全国調査。15)数値が100%にならないのは「教育でも研究でもない」と回答した教員が1%強存在するためである。16)オーストラリアの政府機関(DEEWR)による調査で、1996年から2007年3月(調査報告時)にわたって非常勤や時間給の教育専念教員の著しい増加がアメリカやイギリスにおいて観測されている(Cowley,2010,pp.27-28)。17)上述のアメリカ教育統計(2011)では、そのままカーネギー調査と対比するのは困難だが、2003年時点で、アメリカのフルタイム教員と教育スタッフ(フルタイム相当の教員)は平均58%を教育に費やし、研究に20%、(管理運営や専門職開発等の)他の活動に22%を費やしていた(Thomas&Sally,2012,p.281)。また、江原はカーネギー調査の再分析で、アメリカの大学教員(非常勤も含む)の研究志向が、公立研究大学で51.7%、私立研究大学で55.6%であるのに対し、公立一般大学では18.3%、私立一般大学では22.7%と大学区分によって大きく異なることを示している(江原、2003年、74頁)。18)国内においても有本らの大学教授職の理念としての「教育と研究の両立」の主張があり、その後、さまざまな研究者から異なるアプローチで議論が続いている。たとえば葛城はボーダーフリー大学の教員に焦点を当てて「教育と研究の両立」における実態や課題を分析している(葛城、2016年他)ほか、羽田は研究と教育を単純な二項対立に置くことが問題だと主張している(羽田、2011年)。また、浦田は国内外の大規模教員調査を精査し、教育と研究はトレードオフの関係ではなく、そもそも日本の大学教員の労働時間が上限に達しているために、一方を立てれば他方に時間を割けない状況が生じると指摘している(浦田、2013年)。さらに最近では大学教育研究センター等の新たな教員グループにおける職務の位置づけや専門性の是非を問うものもある(宇田川、2016年)。参考文献有本章・江原武一編著『大学教授職の国際比較』玉川大学出版部、1996年。有本章「はしがき」有本章編『変貌する世界の大学教授職』玉川大学出版部、2011年。浦田広朗「大学教員の時間使用と授業改善」名城大学大学院大学・学校づくり研究科『大学・学校づくり研究』第5号、2013年、15-24頁。浦田広朗「大学院の変容と大学教員市場」労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』2015年7月号(No.660)、2015年、4-15頁、宇田川拓雄「大学教員の職務再考-高等教育センター専任教員を例として-」『高等教育ジャーナル-高等教育と生涯学習-』23、2016年、43-52頁。江原武一「大学教員のみた日米の大学:90年代初頭」『京都大学大学院教育学研究科紀要』第49巻、2003年、69-91頁。愛媛大学テニュアトラック実施本部編「愛媛大学テニュアトラック制度ガイドブック2016」、2016年。岡本摩耶・岡本拓也「大学教員の雇用状況に関する調査-学術研究懇談会(RU11)の大学群における教員の任期と雇用財源について-」文部科学省科学技術・学術政策研究所第1調査研究グループ、調査資料241、2015年。沖裕貴「カナダにおける教育専念教員の実態について-導入の背景、特徴、課題-」『大学教育学会第39回大会発表要旨集録』2017年、272-273頁。葛城浩一「ボーダーフリー大学教員の大学教授職に対する認識(5)-先行研究で得られた知見との比較を中心に-」香川大学大学教育基盤センター編『香川大学教育研究』第12号、2015年、91-103頁。葛城浩一「教育と研究の両立という大学教授職の理念に疑問を呈している教員とは-ボーダーフリー大学に着目して-」広島大学高等教育研究開発センター大学論集第48集、2016年、161-176頁。葛城浩一「「教育と研究の両立」という大学教授職の理念に疑問を呈している教員とは-ボーダーフリー大学に着目して-」広島大学高等教育研究開発センター『大学論集』、第48集、2016年、161-176頁。なお、葛城はボーダーフリー大学に着目した論考を多数執筆しているが、ここでは割愛する。金崎英二「教育に専念する教員の専任と早期卒業制度の拡充」『徳島大学大学教育研究ジャーナル』第12号、2015年、48-53頁。小林淑恵「若手研究者の任期制雇用の現状」労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』2015年7月号(No.660)2015年、27-40頁。実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の在り方について(審議のまとめ)」文部科学省、2015年3月27日。羽田貴史・土持法一「カナダのEducationalDevelop―15―カナダおよび先進諸国の教育専念教員の実態について

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