中部大学教育研究17
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めの教授資格を模索する大学も現れている(愛媛大学、2016年)。5)ただし、2016年5月30日に公表された中教審答申『個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について(答申)』では、教員資格について若干トーンダウンし、各分野の特性にも配慮しつつ、専任の実務家教員を一定割合(例えば、おおむね4割程度)以上配置するよう義務付けるとなっている(21頁)。6)2005年の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」で用いられた用語で「①世界的研究・教育拠点」「②高度専門職業人養成」「③幅広い職業人養成」「④総合的教養教育」「⑤特定の専門的分野の教育・研究」「⑥地域の生涯学習機会の拠点」「⑦社会貢献機能」の各機能を大学ごとに比重の置き方を変えて選択すべきだというもの。同様の考え方は1971年のいわゆる四六答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」でも「種別化・類型化」の方向が出されている。7)学校基本調査によると入学定員を割っている大学は近年46%('12)、40%('13)、46%('14)、43%('15)、45%('16)と高水準で推移している。また短大の定員割れは2016年度で66.9%で3校に2校の割合となっている。8)「カーネギー大学教授職国際調査」(1992)によると、フルタイムの大学教員の研究志向の強さは高い順にオランダ75.2%、日本72.5%、スウェーデン66.9%、ドイツ65.7%、イスラエル61.4%、イギリス55.7%、韓国55.6%、香港54.1%、オーストラリア51.8%、アメリカ50.8%となっていて(有本・江原、1996年、153頁;福留、2011年、255頁)、日本の大学教員の研究志向の高さが際立っている。また、有本らが参加して2007年に行われたCAP調査(ChangingAcademicProfessionプロジェクト調査)でも日本の研究志向が71.7%と依然高い状況が続いている(福留、2011年、255頁)9)GravestockとGregorGreenleafが2008年の調査でTSFの導入が確認された大学は、Bishop'sUniversity,CarletonUniversity,DalhousieUniversity,LaurentianUniversity,McMasterUniversity,SimonFraserUniversity,ThompsonRiversUniversity,UniversityofBritishColumbia,UniversityofNewBrunswick,UniversityofRegina,UniversityofToronto,UniversityofVictoriaの12大学である。また当調査にはカナダの8大学が調査対象から外されたが、その主な理由はテニュア資格および承認規定が審議中であったり、当調査に含まれている他の機関と(法人が)重複していたりすることである10)教育的リーダーシップとは、教室を超えた影響を持つ教授・学習の革新を促進する活動のことであり、UBC上級任用委員会(SAC)における「再任用、昇任およびテニュア手続き、2016/17(GuidetoReappointment,PromotionandTenureProceduresatUBC2016/17)」に具体例が詳述されている。たとえば、教育・学習・評価における革新やカリキュラム開発・改訂における貢献、SoTLへの関与、教授・学習に関する査読付きの論考や会議、ワークショップ等における貢献、教授・学習にかかる各種表彰や同僚への啓蒙活動などが挙げられている。11)オンタリオ州では5年制の高等学校を4年制に移行する過程で2003年度に卒業する高校生の数が二倍(doublecohort)になるという事態が生じた。大学側は急遽、入学者の急増への対策を講じたが、この影響は彼らが卒業する年度まで続くことになった。12)日本においては顕著に見られる現象ではないが、たとえば、他のOECD諸国や、特にオーストラリアにおいては、18歳から24歳までの大学入学者の増加を超えて、40歳以上の、より高度な就業機会を求めて大学に入学する現職の職業人が急増し、生涯学習機関としての大学の位置づけにむけて再構築が図られている。Curtisはアメリカのフェニックス大学(TheUniversityofPhoenix)とカペラ大学(CapellaUniversity)の例を挙げて、両大学が現職の専門職のために教育専念機関(teachingonlyinstitution)に特化した経営方針をとって成功していることを紹介している(Curtis,2000,pp.11-13)。13)インターネット上の記事として、TSFが自らその職を選んだ理由を肯定的に述べているものが多数見られる。例として、"Fiveteaching-streamprofessorstelltheirstories",http://www.universityaffairs.ca/features/feature-article/five-teaching-stream-professors-tell-stories/(2016/07/09閲覧)や"Foranewkindofprofessor,teachingcomesfirstAddto...,",http://www.theglobeandmail.com/news/national/education/new-breed-of-university-faculty-puts-focus-on-teaching-over-research/article14117866/(2016/07/14閲覧)。―14―中部大学教育研究No.17(2017)

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