中部大学教育研究17
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栽培試験が実施されていた。こうした研究環境もUCDが先鋭的な成果を発表し続けられる一因なのだろう。私は日本ではサボテンの研究をしており、正直クルミという植物自体にはあまり興味が持てなかった。しかし研究手法(技術)を学ぶためと割り切り、実験だけは研究室の誰よりも多く行った。深夜も土日も実験室にいる私を見て、同僚たちに「タカは実験室に住んでいる」と言われていた。結果的には研究を実施する過程で多くの実験手法に加え、実験の進め方やラボの運営に関する知識を身につけることができた。写真5左からクルミの胚(子葉)、種子、果実写真6形質転換体(クルミ)の実験圃場3.4サボテンUCDにはサボテンを栽培・管理する温室があり、非常に多くの種が保存されていた。この温室は種の保存だけでなく、学生の講義や研究に利用されている。温室を管理するスタッフと親しくなり、サボテンの栽培や接ぎ木に関する技術を教えてもらうことができた。またアメリカ南部はサボテンの自生地でもある。週末や休暇を利用してサボテンの調査に出かけた。アメリカ滞在中にアリゾナやメキシコなどにあるサボテンの自生地や植物園を訪問した。特にアリゾナ州のソノラ砂漠で数千のサワロ(和名:弁慶柱)が林立する光景は壮観だった。メキシコでは現地のサボテン研究者に食用サボテンの農家、加工会社、大学などを案内してもらい、多くの友人を作ることができた。アメリカやメキシコで知り合ったサボテン関係者とは現在でも交流があり、共同研究にも発展している。写真7アリゾナ・ソノラ砂漠にて4研究室での学生指導9月からは新しく研究室に配属された大学院生の研究指導も担当した。アメリカの学生が非常に積極的であることは聞いていたが、まさにその通りであった。実験手法を1つ教えるだけでも、操作から原理まで質問攻めにあって毎回非常に苦労した。しかし彼らの基礎学力はそれほど高くないように思われた(私が担当した学生たちだけかもしれないが)。UCDでは修士課程や博士課程を修了するための基準が非常に厳しいため、大学院での訓練を通じて研究者としての能力が鍛えられるのだろう。卒業よりも入学することが難しい日本の大学とは対照的である。また研究指導をする上で国民性の違いを感じることも多かった。日本では遅くまで実験をすることが美徳のような雰囲気があるが、UCDの研究者の多くはそうは思っていないようだ。夜10時を過ぎる頃には実験室にいるのはアジアから来た研究者のみという状況がよくあった。私が遅くまで実験をすると、指導する学生によく嫌な顔をされたものである。その他にも実験の途中に、「コーヒーを飲んでもいいか?」「お腹がすいたので帰してくれ」などと臆面もなく言われ面食らうこともあった。しかし彼らは研究や学習に対して非常に真剣であったため、不思議と何を言われても不愉快になることはなく、むしろ愉快に感じられた。―197―カリフォルニアの青い空

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