中部大学教育研究17
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にて、研究目的、内容、手順の説明を行った。本研究協力への諾否および調査紙の回答内容を、所属病院の看護部に知らせることはないこと、調査紙の回答途中でも回答が終了した後でも研究参加の意向が変化した時にはいつでも撤回できること、その場合には「同意撤回書」の提出をもってデータの消去を行うことを説明し、「同意撤回書」の書式を手渡した。本調査紙は個人の能力を見るためではなく、わが国においてこの基準が一般的に使用できるかを把握するためであることを説明した。4)研究協力への同意を確認し同意書に署名後、調査紙の回答を依頼した。その際、調査紙回答の所要時間を測定した。なお、ICNフレームワークには難しい記述や表現があるため、回答中、研究者に質問できるようにした。4分析方法項目ごとに人数の単純集計を行い、研究対象者の実行状況の傾向を見た。5倫理的配慮本研究は、中部大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号270123)。研究対象者には、研究の趣旨、目的、方法の説明、研究への参加協力の自由意思と拒否権を保証すること、データ(調査紙の回答、個人属性)は、研究目的以外には使用しないこと、調査紙は無記名とし、データは個人や施設が特定できないように記号化し匿名性を確保すること、本研究は学会発表および学術雑誌で公表することを説明し、同意を得た。6用語の操作的定義ジェネラリスト・ナース:日本看護協会「看護にかかわる主要な用語の解説」(2007)内のジェネラリストの定義である「特定の専門あるいは分野にかかわらず、どのような対象者に対しても経験と継続教育によって習得した暗黙知に基づき、その場に応じた知識・技術・能力を発揮できる看護師」を参考にし、『あらゆる場で、あらゆる対象者に合った看護を提供しているスタッフ看護師』とする。7結果7.1研究対象者の概要22の病院に研究協力依頼を行い、5病院から同意が得られた。病院の規模は250~710床である。各病院の看護部より数名ずつ研究対象者を紹介してもらい、研究への参加に承諾を得られた23名に調査紙の回答をしてもらった。そのうち3名は、調査紙回答当時副看護師長に就任していたため分析からは除外した。研究対象者20名の年齢は36~49歳で、平均年齢は40.3±4.2歳であった。准看護師としての経験を持つ者が4名いたが、その経験年数は除外して看護師としてのみの臨床経験年数は12~27年で平均16.9±3.9年であった。経験施設数は、医院や高齢者施設も含み1~5施設で、経験部署数は病棟以外の部署も含み2~8部署であり、全員に異動経験があった。7.2調査紙の回答時間調査紙回答の所要時間は6分50秒~23分で、平均11分55秒であった。7.3ICNフレームワークの実施状況研究対象者20名のICNフレームワークの実施状況を表1に示す。対象者の多くは、98項目中92項目において「いつも実行している」または「時々実行している」と回答した。一方、研究対象者の過半数が「やっていない(実行していない)と回答した項目はなかった。約3割の対象者が「やっていない(実行していない)」と回答した内容は「戦争・暴力・紛争・自然災害の状況における倫理的判断・ケアの優先順位を理解していることを患者に示す」「災害時対策を理解していることを患者に示す」「保健医療技術の開発の実施状況を理解していることを患者に示す」「政策策定・プログラム計画の参加を推進する」「専門看護実践の発展に貢献する」「看護発展への貢献・ケア基準を改善する手段として調査を高く評価する」の6項目であった。7.4調査紙回答後の感想すべての回答が終了した後に対象全員から「言葉が慣れていない」「難しかった」という感想があった。1名からは「こういうことを実行していないといけないんだと知った」という言葉があった。8考察8.1ICNフレームワークのわが国での活用調査紙98項目のほとんどを研究対象者は実行していた。これより研究対象者が認識または実行している看護実践は、ICNフレームワークの能力基準と合致していることが考えられる。対象者はスタッフのロールモデルになっているとして推薦を受けているため、優れた看護実践能力を発揮しているジェネラリスト・ナースのエキスパートであると捉えることができる。したがって、ICNフレームワークで「いつも実行している」に近づくほどジェネラリスト・ナースのエキスパート―163―わが国におけるICNジェネラリスト・ナースの国際能力基準フレームワークの活用

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