中部大学教育研究17
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おり実用性に富んでいる(洪,2005)と評価されている。これはキャリア発達を模索している臨床経験10年未満の看護師にとってジェネラリスト・ナースのエキスパートに必要な能力が見えるもので、自分に何が不足しているのかがわかり、目指すべき方向の指標となり、自らのキャリア発達へ活用することも期待できる。またジェネラリスト・ナースとして働く経験を積んでいる看護師にとっては、自己の能力の確認として活用できる。さらにICNフレームワークがわが国で活用できることがわかれば、看護基礎教育卒業時から10年間の節目節目でジェネラリスト・ナースの能力評価尺度として使用できる可能性があると考える。ICNフレームワークは日本看護協会が教育計画基本方針作成にあたり参考にしており(洪,2005)、中国では看護師の能力尺度開発の基礎資料に活用されている(LiuM,2007)。しかしながら、このICNフレームワークを活用することでジェネラリスト・ナースの能力が測定できるのかの調査報告はされていない。2研究目的本研究は、ICNフレームワークがわが国のジェネラリスト・ナースの能力基準として活用することができるのかを検討する。ジェネラリスト・ナースの能力を高めていくためには、目指すべき能力基準を具体的に示す必要がある。能力基準を明らかにすることで、ジェネラリスト・ナースの教育・指導に対する手がかりやキャリア支援の具体的資料が得られる。また、ジェネラリスト・ナースのエキスパートを目指す看護師が自己研鑽を行うための基準として活用できる可能性がある。3研究方法3.1研究デザイン本研究は量的記述的研究(実態調査研究)である。3.2研究対象者の選出東海地区にある複数の地域中核病院で、看護学生の臨地実習を受け入れている病院を選定し、研究への協力が得られた病院の看護部に研究対象者の推薦と紹介を依頼した。これらの病院を選定したのは、地域中核病院には臨床経験10年以上のジェネラリスト・ナースが多く存在していること、また学生の臨地実習に実習指導者を配置できる病院は看護師に対する継続教育が体系化されていると判断したからである。研究対象者の条件は、現在、病棟で直接、患者に看護を提供する35~49歳の臨床経験10年以上の女性スタッフ看護師で、スタッフのロールモデルになっている人とした。35~49歳を設定した理由は、新人看護師がライフイベントなどを経験しながらも臨床経験10年以上を経ると、30代後半から40代になっていることを想定したからである。また、ロールモデルになっている人を設定した理由は、ジェネラリスト・ナースのエキスパートと想定される人からの回答を得るためである。3.3ICNフレームワークを活用した調査紙の作成ICNフレームワークは日本看護協会により邦訳されたものを使用した。3つの概念内容をみると、「専門的、倫理的および法的な実践」では「ICN看護師の倫理綱領」に基づいて実践することが20項目で強調されている。「ケア提供とマネジメント」では論理的思考に基づいた看護過程の実践により良質のケアを提供し、患者の安全な療養環境を保障することが64項目で示されている。「専門性の開発」では看護の専門性と質の向上に努める能力や自己研鑽・生涯学習への責任を持つことが14項目で提示されている。研究調査のために、ICNフレームワークの98項目に対し1~98まで通し番号を付け、各項目について3件法(いつも実行している・時々実行している・やっていない)で回答する調査紙を作成した。3件法としたのは、今までICNフレームワークを用いた調査はなく、能力基準として活用できるのかを検討するための初期調査として、対象者の回答傾向の把握を目的としていること、また98項目という多めの設問にスムーズに回答できるようにしたためである。現職の看護師2名と病院勤務経験のある看護教員1名へパイロットスタディを実施し、調査紙の精緻化と所要時間の調整を行った。各項目の文言は意味内容が変化しないように留意し、必要箇所をスタッフ看護師にもわかるような表現に改変した。3.4データ収集1)研究協力の承諾が得られた病院の看護部経由で各病棟師長に研究対象者の条件に合う看護師の推薦を依頼し、その看護師へ研究協力の返信はがきを加えた書類一式の配付を依頼した。研究協力は自由意思であり、協力しない場合でも不利益はないこと、研究への協力意思がある場合のみはがきを投函するよう研究依頼文書で説明した。はがきには個人情報の記入項目があるため、プライバシー保護シールを添付した。2)返信はがきにて研究協力の意思を示した対象者へ、本人が希望した方法(e-mail/職場の電話/個人の電話)で連絡を取り、調査紙回答の日程と場所を調整した。3)調査紙回答当日はプライバシーの確保できる場所―162―中部大学教育研究No.17(2017)

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