中部大学教育研究17
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じて、多職種連携のあり方を考える機会ともなった。特に印象的だったのは、スタブハブセンターにおいて米国の消防士がケガの予防や体力づくりのためのトレーニング時に、運動指導者のサポートを活用しており、全く異なる職種である運動指導者と消防士とがつながっている点を見いだせたことであった。看護師も病院、在宅、介護施設等様々な場で、あらゆる年代の傷病者を看護している。特に自ら姿勢を変えることのできない重症者や高齢者の看護においては、看護師自身の身体に負担をかけない、ボディメカニクスを考慮した看護技術が不可欠である。傷病者・看護師双方に安全で安楽な看護を行うためには、看護師自ら運動を含めた健康管理に取り組むことも必要であろう。そのために運動指導者からサポートを得ることが有効ではないかと、今回の研修を通じて示唆を得た。パラメディックを目指す学生が、パラメディックだけを学ぶのではなく、パラメディックと健康運動指導のつながりに気づき、将来医療を支えるチームの一員として連携するにあたり、研修で得られた学びを活かしてほしいと願っている。そして今回研修に参加した学生の多くが、そのことについて貴重な学びを得られたと感じている。7救急救命士からみた本研修内容今後、日本の病院前救護体制が米国と同等、もしくはそれに近い体制となる可能性を含め、米国と日本の様々な文化や習慣の違いを知ったうえで、日本の救急救命士を目指す学生が、自分に足りないことや、必要なもの、今後、日本の病院前救護体制が目指すべき姿を考えるために非常に有効な研修であると考える。できれば救急車に同乗し、現場を体験できれば、帰国後に行われる同乗実習とリンクさせることができ、より米国と日本の病院前救護体制の違いを明確に知ることができるのではないかと考える。8健康運動指導者を養成する立場からみた本研修内容冒頭で述べた通り、本学科は、救急救命士と健康運動の指導者を養成することで地域へ貢献を果たすということが使命の一つにある。本研修では、健康運動指導の視察時間が、救命関係のそれに比べて少なく、次回に向けて修正が必要である。個人的には、今回の研修先のリバーサイド郡のすぐ近くには、世界で健康的な生活をしている場所の一つとして有名なロマリンダがあり、そこでの健康運動の指導の視察を実施したかったと後悔の念が残る。また、健康運動の指導とパラメディックをどのように関連付けるのかも難しい課題として残る。9まとめ本研修に参加した学生は、救急救命士あるいは健康運動指導者と、目指す進路は異なるものの、米国におけるパラメディックと健康運動指導それぞれの特徴と、双方の共通点を学ぶことができた。学科では1年次からスポーツと保健医療両方の分野を学修するが、その延長線上に本研修があることを改めて実感した。また1年生から4年生まで、幅広い年代の学生が参加したが、研修中のみならず研修前後も、年齢に関わらずお互いに助け合う様子が見られた。年齢は異なっても、スポーツという共通項があるからこそのつながりであったと思う。そしてこのことも、研修への積極的な参加を促したと感じている。研修に関わった教員も医師・看護師・救急救命士そして健康運動指導者を養成する立場の教員と、バックグラウンドが様々であったからこそ、ユニークな研修の実現につながったと考える。今後はお互いの特性を生かし、更なる研修の充実を図り、その成果を本学科学生のみならず大学全体へ還元することを目指したい。―159―スポーツ保健医療学科第一回海外短期研修を終えて

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