中部大学教育研究17
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写真7現地教員・学生と共に昼食をとる3.3病院見学(救急、児童虐待、小児科)午後はリバーサイド郡立メディカルセンターの救急外来、病院施設の見学であった。救急医療部門の担当者より、施設の概要について説明がなされた後、施設の見学を行った。写真8リバーサイド郡立メディカルセンターリバーサイド郡立メディカルセンター(以下、センター)は主に外傷・脳卒中・小児医療(児童虐待含む)・敗血症を専門としている。救急外来には1か月あたり約1,600件の受入要請があり、重症外傷事例は年に約1,700人搬送され、地域のセーフティネットとして機能している医療機関であると説明があった。また遠隔地の傷病者に対応するため、ドクターヘリによる救急搬送を行っている(パラメディックが同乗)とのことだった。ER外傷センターは38床で常に満床であり、見学時もER外に処置を待つ多数の傷病者が待機していた。小児医療部門では小児ICU(8床)、小児科病棟およびチャイルド・プロテクト・サービス部門の見学を行った。日本同様、米国においても児童虐待は深刻な社会問題であり、センターでは特に3歳以下の子どもの事例が多く、身体的虐待と性的虐待の比率は1対1であるとのことだった。虐待事例の把握は外傷等による外来受診時、電話による救急要請時、学校関係者からの通報等多岐に渡り、病院関係者のみならず、パラメディック・学校・警察など子どもを取り巻く全ての職種が連携して、子どもの保護に努めている。センターの役割は子どもの代弁者となることであり、子どもが安心して診察を受けられるよう、診療部門から離れたところにインタビュールームを設けるなど、環境面にも十分配慮しているとのことであった。またパラメディックにとっては、救急要請のあった現場での子どもの証言が真実に近いため、子どもと接触した際もれなく情報収集を行うことが重要である。施設見学後のディスカッションでは、日米の保健医療システムの相違点(医療保険制度等)、感染標準予防策の基準について、薬物依存(主に麻薬)傷病者の治療等が話題に挙がった。学生からは「地域が広大なため病院までの距離が遠く、だからこそ救急救命士ができる処置や薬剤投与の幅が広いことは、傷病者にとっても病院にとってもメリットがある」「保健医療従事者それぞれが専門外の職種に対して絶対的な信頼をしており、チーム全体で保健医療サービスを支えていることが感じられた」といった感想が聞かれたことから、見学を通じて、救急医療における米国と日本の相違点や課題に気づくことができたようである。3.4AMR見学午前中は米国最大規模の民間救急業務会社であるAMRおよびNCTI(パラメディック等養成学校)の見学を行った。写真9NCTI(パラメディック等養成学校)最初にNCTIの教員より気道確保について講義があった。解剖学から始まり、処置の原則とその根拠についてイラストを交えたスライドを用いて、わかりやすく講義して下さった。講義を通じて、一刻を争う救急現場であるからこそ、傷病者に必要な処置の原則とその根拠を正しく理解することが、正しい判断そして行動につながっていくことを再確認した。次にAMRの管理担当者であり、パラメディックであるDerekGray氏より、骨髄穿刺の実技演習が行われた。―155―スポーツ保健医療学科第一回海外短期研修を終えて

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