中部大学教育研究17
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1はじめにタバコの害は、喫煙者本人ばかりでなく周囲の人に対しても、肺がんや心疾患などの生活習慣病のリスクを高めることが明らかになっている1)2)。平成27年国民健康・栄養調査によると、日本の20歳以上の喫煙率は男性30.1%、女性7.9%と年々減少してきている。しかし、若い年齢で喫煙を開始したものはニコチン依存度が高いこと、禁煙に成功しづらいことなどが報告され、若者の喫煙予防対策が課題とされている1)3)。高橋は、「喫煙という疾患は15~22歳に罹患しやすい疾患であり、22歳過ぎての罹患は少なく、大学卒業までに非喫煙でいることが重要である」と大学における喫煙防止教育の必要性を述べている4)。近年、危険ドラッグの乱用を含め、麻薬、覚せい剤の薬物が心身の健康や社会に及ぼす弊害の防止策として、国は、平成25年第四次薬物乱用防止五か年戦略を策定している。その中で、大学等の学生に対しては入学時のガイダンスの活用を促すとともに、その際に活用できる資料を作成するなど啓発活動を推進することとしている5)6)。また若年層の大麻乱用を未然に防ぐためには、まず喫煙をさせないことが重要であり、薬物乱用防止教育は喫煙防止教育と併せて行うことが効果的であることが示されている7)。喫煙つまりニコチン依存は、タバコを摂取したいという強い欲求(渇望)と同時にニコチンを体内に入れたいという行動をする状態であり、現在、社会問題となっている危険ドラッグ、麻薬、覚せい剤などの薬物依存と共通している8)。このような背景から、生活習慣を含めて大学生の喫煙や薬物に対する現状を把握し、喫煙防止教育および薬物乱用防止教育の啓発・指導を行っていくことが重要であると考える。本学においては、2007年9月から建物内全面禁煙を実施し、建物外に「喫煙コーナー」を設けている。喫煙コーナーは徐々に撤廃され、現在は10か所(2017年4月)を指定している。また、校内での学生の喫煙マナーの意識を向上することを目的とし、月の第3週目の5日間、昼休みの時間に教職員が喫煙コーナー付近を中心に見回りを行い、学生に声かけをする「キャンパスマナー強化ウィークの声かけ運動」を実施している。また、平成21年、平成23年の2回、学生の喫煙と生活習慣に関する横断調査を実施した9)10)。その結果を冊子「たばこと薬物」に記載し、新入生へ配付するなど喫煙防止教育・薬物乱用防止教育の推進に役立てている。そして、今回は、今までの調査内容に薬物に対する質問項目を追加し、平成29年3~4月にアンケート調査を実施したので、その一部を報告する。2調査方法2.1調査方法および対象者本学学部生および大学院生11,371名に対し、平成29年3~4月学科別オリエンテーション時にマークシートによる無記名自記式質問紙調査を行った。回答の有無にかかわらず回収することとした。回収数は9,163名(回収率80.6%)であった。無回答、調査への参加意思がないもの、学年、性別に記入漏れもあるもの、喫煙経験に回答がないものを除き、8,098名(有効回答率88.4%)を分析対象とした。2.2質問項目質問項目は、調査への参加意思、基本属性(性別・学年・居住状況)、定期健康診断受診の有無、主観的健康感、最近1か月の生活習慣(喫煙の経験・朝食摂取頻度・飲酒頻度・清涼飲料水摂取頻度・運動頻度)、危険ドラッグ(勧められた経験の有無・勧めた経験の有無・今までの教育内容・教育場所)である。また、喫煙の経験があると回答したものに対しては、タバコを吸ったきっかけとその時期、禁煙への関心を追加質問した。2.3分析方法喫煙の経験のあるもののうち、過去の喫煙経験にかかわらず現在タバコを吸っていると回答したものを「喫煙者」、現在タバコを吸っていないと回答したものおよび今までに吸った経験のないものを「非喫煙者」として、対象者を2つのグループに分けて比較検討を行った。なお、基本属性、居住状況および定期健康診―145―大学生の生活習慣と喫煙・薬物に関する意識調査藤丸郁代*1・栗濱忠司*2・馬場礼三*3・伊藤守弘*4・岡村雪子*5・近藤孝晴*6*1生命健康学部スポーツ保健医療学科准教授*2工学部電子情報工学科教授*3生命健康学部スポーツ保健医療学科教授*4生命健康学部生命医科学科准教授*5生命健康学部スポーツ保健医療学科講師*6健康増進センター教授

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