中部大学教育研究17
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6教師の役割ブレンディッドラーニングとは、単にオンラインとオフラインの混合を意味するものではない。ここで探究が始まっているのは、授業の質を向上させるための努力であり、カリキュラム目標と各学年の授業の特性に照らし合わせて学習環境のバリエーションからベストを選び、さらには各環境下において学習形態からベストを選んで授業を実践していくことである。ブレンディッドラーニングにおいて、学生の英語学習意欲を向上させるためには、教師には次のような役割が必要だと考えられる。①対面授業において学生が学習ターゲットを習得できるようトレーニングする時間を最大限配分する。②対面授業での学習、授業外での自己調整学習を観察し、習熟度を把握する。③学生の現時点での意欲や関心、習熟度に適するよう教材を調整し、アクティビティをデザインする。④学生が自己肯定感を得られるよう目標を設定、アクティビティをデザインし実践する。⑤学生が学ぶ価値を実感しながら実習できるアクティビティや授業を総合的にデザインする。⑥アクティビティをどのような準備段階を経て、どのようなタイミングと順序でさせていくと効果的かを把握する。⑦どのようなアクティビティが長期的に効果的な学習につながるかを把握する。⑧アクティビティにおける学びの発生の様子、学生の反応、習熟度の変化を観察し、次の教材活用、授業デザインに活かす。ブレンディッドラーニングを効果的に行うために、教師には①Response力、②Reflect力、③Reinforce力といった3つの「R」が必要であろうということも、4年間の取り組みから明らかになってきている。Response力とは、学習の様子にタイムリーかつ効果的に応えられる力である。Reflect力とは、学習ニーズを反映して教材を最適化する力である。Reinforce力とは、学習内容の質の向上を図ろうとして、常に教師力を強化しようとする力である。前述のGlexaでの課題作成数の推移には、教員のReflect力、Reinforce力が現れている。各学年とも春学期より秋学期に課題数が増加する傾向(平均2.5倍)がある。これは英語の土台づくりを慎重に行い、徐々に吸収を促す学習機会を増やしていることを表している。また同じ学年の同じ教材を対象としていても、年度が進むにつれ課題数が増える傾向もある。1期生の1年次と2期生の1年次では課題数が2.4倍、同じ1年次を比較しても、1期生と3期生とでは、3期生対象が3.3倍となっていた。これは前年度の経験を次年度に活かそうとしている教員の「さらに学びの質をあげよう」とするReinforce力を表している。前述のスパイラルラーニングでは、対面授業(F2F)と自己調整学習(SRL)を通して得た力を土台として次の学習に挑戦し、補強と反復を繰り返しながら、言語運用の土台づくりをさせようとする教授法が学びの促進力となっている。教師は、F2Fでしか学べないことをF2Fで行うという選択をする。「個別にでも学習できる」あるいは「個別のほうが個々のペースと濃度で効果的に学習を進められる」ことはSRLで行う選択をする。効果的なスパイラル型ブレンディッドラーニングには、この2つの選択が最重要である。その際、教師には的確な教材選択眼、アクティビティデザイン力、教授法選択力、タイムマネージメント力も求められる。このような教師の役割や教授力は、新たにブレンディッドラーニング時代に始まったものではない。ブレンディッドラーニングを機に教師の役割が拡大したとすれば、―135―英語ブレンディッドラーニングの実践と英語学習への意欲向上図121期生1年間のCASECスコア推移図131期生2年間のCASECスコア推移

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