中部大学教育研究17
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他方、題材をそのままではなく何らかの足場かけを施し調整したほうが効果的に学べると判断する場合は、レベルの最適化(Adjustlevel)、アクティビティの補充(Supplement)、アクティビティ実施順序の最適化(Re-sequence)、省略(Omit)など調整方法を教師は選択する。次にそれをF2Fで行うか、SRL課題とするか、e-Learningとするか否か、学習形態をどうするかを選択することになる。調整をする場合もそうでない場合にも、1つのアクティビティを通して教師は学習の様子を把握し、それを次の教材の最適化に反映するというフィードバックというプロセスを経て学生の現状により即したアクティビティを用意し、スパイラルラーニングを実現できる方法を練っている。図4のプロセスの具体例を示してみよう。英語弱者の精神的負担や不安は、英語量に比例して増加しやすい。リスニングであれリーディングであれ、それまでに培ってきた力で、SRLとして学生に預けてもよい素材と、それをしては学生の不安を増させることになる素材とがある。もし課題を行うだけの力の準備が充分であればSRLは苦痛ではなく、自己肯定感を得る機会となる。しかし、そうではない場合にはF2Fにおけるケアや準備、トレーニングが効果的なSRLのための要となる。3.2アクティビティデザイン例えば300~400語のリーディングが教材にあるとする。「英語は見るだけで嫌だ」というような拒絶感を持っている学生に対して、抵抗を感じさせないで無意識のうちに文を読まざるを得ない状況に学生を誘導することは可能だろうか。2年次のカリキュラムで筆者が実践しているアクティビティには、次のようなものがある。教材の難易度によって、まずアクティビティのデザインは変わる。段落展開を学びやすい素材(具体的にはテキストユニット内のリーディング教材)であれば、各段落をカード化して並べ替えをさせ、パッセージを完成させる「ParagraphShuffle」のアクティビティにすることができる。一人で悩むよりも互いの力を結集して補完し合いながら、辞書を引いて語彙の意味を確認し合い、内容を考え合いながら段落構成を考えていかせるペアアクティビティを実践することができる。このアクティビティの難易度を少しあげたい場合には、各パラグラフからさらに一部の文を抽出して別のカードにしておき、適切な場所に文を補充しつつパラグラフ構成も考えるアクティビティとすることもできる。語彙単位に注目をさせたい場合には、キーワード部分の語彙グループまたは語彙を抽出してカードにし、文のコンテキストと内容を考えながら適切な箇所に語彙を補完し文、段落を完成させるアクティビティにもできる。学生はペアやグループで段落ごとに内容を確認し合いながら、このように欠けている語彙情報を埋めていく作業をするうちに、パッセージ全体の内容を理解しようとすることになる。内容の難易度によって、辞書使用を敢えて禁止する場合と、辞書使用を奨励する場合とがある。「そのアクティビティを通して学生にはどのような力がつくのか」を考慮することなく、単に「このほうが楽しそうだから」という理由だけで作成したアクティビティは成功しない。アクティビティを考案する際、教師は学習目標と学生の習熟度を必ず照合し、実践前のインストラクション方法、実践中の助言・促進方法、実践後のまとめ方、その後の振り返りなどまでプラン―131―英語ブレンディッドラーニングの実践と英語学習への意欲向上図4教材活用方法判断のプロセス

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