中部大学教育研究17
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りも多いこと。発せられる声の質にも注意すること。②教師による一方的な解説や模範だけを主とした一斉授業ではなくペアやグループでの協調的学習時間が多く、個々の実技時間が多いこと。③学生同士、学生と教師のインタラクティブ性のみならず各学生の中に内面的な学び(インナーアクティブ)が活性化する機会が多いこと。図2はこのようなスパイラルな学びが各授業で起こり、対面授業と個別自主学習が大きな渦へと短期的に発展していく様子を示している。それが一学期となり、それぞれの学期、年度がさらに長期的に結び合わさってスパイラルラーニングが連続し、少しずつ大きな学習になっていく様子が図3である。3授業実践例3.1授業プランニング図2、図3のようなスパイラルラーニングを巻き起こすための授業プランニングのプロセスについて、例を示したい。2年次の授業では、3名の教師が授業時間を半分ずつ担当し1つの授業を作り上げている。(表1参照)各教師が担当する各アクティビティは、単独で成り立っているものでありつつも、教師AとBのアクティビティとがシナジーを生み出さなくてはならない。筆者らが実践している手順は次のとおりである。①教材を語彙表現、文法・構文、言語運用スキル、言語運用ストラテジーの4つの視点から検討する。②学生の習熟度、意欲に照らし合わせて教材にある学習ターゲットへどのようにアプローチするのが適切かを検討する。③学習ターゲットをインプットし、定着させるために、教材を補正または補充し最適化のための調整が必要であるか否かを検討する。④①~③を踏まえてアクティビティをデザインし、アクティビティの導入から実践、振り返りまでを授業プランに織り込む。⑤④を対面授業のコアとして、①の中からSRLに適しているものを選び、F2Fでのコアとの関連性を持たせながらSRL課題を作成する。⑥教師A・BがそれぞれのF2F、SRL課題プランを共有し、全体として学習目標にずれがなく、両者が担当する各時間の学習でそれぞれ達成感を得られるようにし、授業全体としても達成感を得られるF2Fのプランを練る。この授業実践では、教材をそのまま使いページを順にめくりユニットを終えていくといった授業は行われていない。教材作成とLMSを備えたwebプラットフォーム「Glexa」を活用することにより、学生が自分のペースで学習したり、教材にある設問の正解を確認したりすることができるため、学生がSRLを行えることは「Glexa」で、それ以外の教師を必要とするトレーニングをF2Fで行うことが実現できている。前述の②にある「学生の習熟度、意欲に照らし合わせて」③にある「最適化のための調整が必要か否かを検討する」ことは、学生が学びの達成感を味わい、自己肯定感を感じられるようなアクティビティの実践において重要である。教材の最適化とは、教材が用意しているものをそのまま授業で用いるのではなく、学生の現状での力が発揮できるように、また、足りない力を補えるように足場かけをすることである。図4は、教師が教材の活用方法をどのように判断していくかというプロセスを示している。図4にあるMaterialとは、教材のあるユニットの1つの素材のことである。学生たちの習熟状況や学習意欲がどのような状態にあるかによって、教師はその素材をそのまま用いるか否かをまず判断する。最適化は不要でそのまま素材を使うことができると判断した場合、次の判断はそれを対面授業で用いるか、授業外自主課題とするかを選択する。その場合もオンラインで行わせるか、それとも紙面などで行わせるかを次に選ぶことになり、最後にはそれを個人で学ばせるかペアやグループで学ばせるかという判断をすることになる。―130―中部大学教育研究No.17(2017)図2短期的スパイラルラーニング図3長期的スパイラルラーニング

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