中部大学教育研究17
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1はじめに平成26年度、本学にロボット理工学科(以下、ER学科)が新設された。入学者が将来専門分野に携わっていくには、世界の様々な英語使用者と意見・情報交換、相互理解できる英語コミュニケーション能力が不可欠となってきている。こうした時代に活躍できる人材養成をめざして、ER学科は語学教育センターと共に1年次から3年次までの英語強化カリキュラムの構築を開始した。本稿では、ER学科における英語カリキュラムの2年次必修科目「英語コミュニケーションA,B」に焦点をあて、その実践方法と平成26~28年度入学者の成果について報告する。2強化カリキュラム概要2.1強化カリキュラムの目標工業高校出身者も含まれるER学科学生の英語力は、ER学科での英語プレースメントに用いているCASEC(英語コミュニケーションテスト)スコアに基づくと、入学時点では概ね英検準2級から5級という格差がある。入学時点での英語力とER学科における人材育成描像との差を打破すべく、筆者は入学から卒業までの英語教育方法を模索している。1年次の達成目標を、次の5点を緩やかに開始することとしている。①心理的バリアの軽減:英語への抵抗感や嫌悪感の緩和と英語学習への再挑戦②未開発能力の育成:リスニングの基礎力育成とコミュニケーション能力素地育成の最優先③学習基盤の形成:Pre-A1(英語能力到達指標CEFR-J)以下のレベルからの脱出④自己調整能力の育成:いかなる領域での学習にも通じる主体的な学習能力の形成⑤異文化受容力・適応力の育成:異文化間コミュニケーションに必要とされる人間力の形成2年次の達成目標には、さらに次の2点が加わる。⑥言語観の育成:履修科目としての語学という枠組みを越え、自己実現力の一助になるよう母語や英語を含む外国語に対する視野を拡大する。⑦自律的学習者の育成:単位取得後において自分に必要な語学力を習得しようとする意欲を維持・継続する。2.2学年ごとの積み上げ式フォーカス図1は、本カリキュラムの学年ごとのフォーカスを表している。リスニング力の形成を基盤としている理―127―英語ブレンディッドラーニングの実践と英語学習への意欲向上-理系学科における取り組みを一例に-小栗成子*1・高丸尚教*2・デイビッドP.アレン*3・加藤鉄生*4要旨早くは小学校時代から英語授業に対する絶望感を感じ続けてきた者が学年の大半を占めている理系学科の学生を対象に、週1回の授業を通して動機付けをし直し、英語でコミュニケーションする姿勢を培ったり、専門領域での英語運用へと導いたりすることは教師にとっても大きな挑戦である。週に90分しかない授業時間をベースとし「いつでも、どこからでも」学習ができる語学環境とICTとをブレンドすることで、最小限の授業時間を最大限の学習のきっかけとし、学生の英語習得への意欲を向上させる教育実践は可能であろうか。本稿では、1つの理系学科での取り組みを例として、教材の選択、教材の最適化、アクティビティプランニング等における教師の役割に焦点を当てながら、英語学習者の学習意欲向上を実現しようとする授業実践について報告する。キーワード英語教育、外国語習得、ブレンディッドラーニング、学習意欲、教師の役割*1語学教育センター教授*2工学部ロボット理工学科教授*3語学教育センター講師*4語学教育センター助手

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