中部大学教育研究17
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はCumocを活用して授業時間外の学習を活性化する試みを行った。3.2Cumocを活用した予習と授業への導入2017年度春学期に実施した試みは、以下のとおりである。前週の授業時に次週の予習課題、たとえば「経営資源とは何か」「ゆでガエル現象とは何か」「財務諸表とは何か」を調べてくるように周知する。経営学入門は、2クラスとも朝1コマ目の開講であるため、担当教員である筆者が授業の始まる30分前に、研究室で回答時間を1時間2)に設定したうえで講義室に向かう。受講生は授業の始まる前にCumocを使って回答する。回答する内容は、前週の復習問題(選択問題)と予め周知しておいた予習課題である。この予習課題をCumocの自由記述欄に授業が始まる前に記入しておくことを受講生に課した。なお、課題を提出する際には、学籍番号と名前を記入するようにさせている。きちんとした内容で回答した学生には、毎回1もしくは2点の加点をしている。この試みは、予想外の授業前風景を生み出した。朝早めに来た学生が、仲間と相談しながら選択問題に答えたり、自分で調べてきた課題の回答を自由記述欄に打ち込む姿が講義室のあちらこちらで見られるようになったのである。授業開始ぎりぎりに来る学生もいるため、9:35-40くらいまで待ち、その後プロジェクタの画面で、先週の復習問題の答え合わせを行い、正答率が低かった問題に関しては、もう一度説明を補足する。さらに、予習内容もプロジェクタの画面で共有するが、ひとつの概念の説明についても、いろいろな種類の回答がある。学生らにとっては、自分以外の学生がどのように回答したかを見るのは興味深いようである。予習課題を画面でスクロールしながら、学籍番号と名前を書き忘れた学生も発見し、授業後に申告に来るように促す。その後、新しい内容に入っていくが、学生たちはその日の授業内容への心構えができているため、スムーズに講義内容に集中できているように見えた。ちなみに、時間外学習としての予習であるため、本格的な授業内容に入る10:00前には、回答は締め切られ、後から授業内容を聞いて、こっそりCumocで回答することはできないようになっている。結果として、2017年度春学期の「経営学入門」では、15週中10週程度Cumocを活用することになった。3.3授業外の学習時間の変化受講生らの主観的回答であるため、厳密なデータではないが、2017年度春学期の最後の授業においても、2016年度と同様に授業に関する質問に回答してもらった。その結果、昨年度と同様に難易度もちょうどよいという学生が最も多く、社会にでてから役立ちそうだという学生が9割に達していた。自習時間については、下記の図1のように、1時間未満しか学習しなかった学生が18%減少し、1時間以上5時間未満の学生が、17%増加している。図1経営学入門の自習時間の変化今回の予習にCumocを活用した試みがダイレクトに授業外学習時間の増加につながっているとは断言できないが、多少の教育効果の向上にはつながったようである。「経営学入門」の内容は、経営情報学部の1年生にとっては、初めて聞く内容ばかりである。だからこそ、自ら学び、日本経済を支える企業活動に関心をもち、必要最低限の専門的知識を着実に定着させていく必要があると考えている。経営学の重要な概念を繰り返し学び、定着させる一助としてCumocは有用な手段であろう。4まとめと今後の課題本報告では、中部大学のクリッカーシステム、Cumocをこの8年間で筆者自身がどのように活用してきたかについて紹介した。クリッカーシステムの効用については、先述したように多くの研究者に紹介されており、筆者自身もその効果については、学生らの反応から実感している。しかしながら、大人数講義で携帯電話やスマートフォンを公式に使用させることで、学生が授業目的以外で使用し続けてしまう可能性も高めてしまう。学生に注意はしているが限界があることも感じている。今後、さまざまなIT機器を活用した授業が増加することは間違いないので、受講生を授業に集中させるより良い方法を他の教員の実践等から学んでいきたい。―116―中部大学教育研究No.17(2017)自習時間の変化

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