中部大学教育研究17
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ていない学生は皆無であり、参加率は出席者の7割から8割であった。授業では全員に回答するように呼びかけているが、たまたま携帯電話を忘れてきた、あるいは充電できていないなどの理由で回答しなかった学生が一定割合いたようだ。自由記述においては、毎回20名から30名程度の学生が、さまざまな感想や質問を記入していた。授業後に質問をするために残ってたずねてくる学生はこれほど多くないので、Cumocがあることで、質問しやすくなっていることは間違いないであろう。「行動科学Ⅱ・B」で試行した結果、得られた教育効果としては、受講生の授業への参加意識の向上である。Cumocに自ら参加しなくとも、他の学生がどういった回答をしたのかに興味を持っている学生が多いようだ。また、毎回の復習をCumocを使って行うことで、専門的知識の定着率も上がり、筆者も自由記述の質問内容から、学生の理解不足の箇所を把握することができたため、次週もう一度解説することを心掛けていた。有意な差があるかなどの検証はしていないが、同様の内容の授業を行った前年度の「行動科学Ⅱ・B」や春学期の「行動科学Ⅰ・A」と比較しても、テストの平均点が上がっていることからCumocによる教育効果の向上が推測できた。2.2その後の授業でのCumoc活用について2011年度以降においても、「行動科学Ⅱ・B」のみならず、経営情報学部の3つの学科対象に開講されている「組織行動論」1)(春学期1コマ秋学期2コマ)においても、Cumocを活用している。ただし、最初の試行授業での結果やその後の授業での受講生の反応を踏まえて、利用の仕方を変化させてきた。「行動科学Ⅱ・B」の授業では、1週目から15週目にかけて、回答率に波があるとはいえ、全体的に少しずつ回答率が下がっていることが確認できた。毎週の授業で3回ずつ利用し、自由記述への記入も促していたため、いちいち回答に参加するのは面倒だと考える受講生が少しずつ増えていた可能性が高い。また、90分の授業時間の間、Cumocを3回活用するため、携帯電話を触る機会が増え、Cumocの回答が終わった後でもそのままメールやその他の機能を使い続ける学生も見受けられた。スマートフォンが急速に普及にするにつれ、ますますそうした傾向は強くなってきた。スマートフォンの情報検索機能や多様なゲーム環境は、学生にとっては強い誘惑になる。そこで、「組織行動論」におけるCumocの利用については、15週間中5週のみにして、小テスト実施の前週に行う復習や、Cumocによるローププレイなどが講義内容の理解に重要であるときのみに絞った。利用する際の授業の最後には、学生にアイデアや意見を出す課題を出し、自由記述に学籍番号・名前とともに回答すれば、評価に加点する方式をとることにした。1回2点ずつで、成績評価の中にCumoc加点が最高10点となるようにしたところ、参加率は出席者数の9割を超えるようになった。加点の場合には、携帯電話やスマートフォンが使えない状況の学生にも配慮する必要があるため、メモ用紙を別途準備し、自由記述加点が欲しい学生には、紙で提出するという工夫も施した。3予習に活用した試みと効果3.1システム改良と学部改組後の「経営学入門」中部大学のCumocの運用は2010年度秋学期から始まったが、Cumocのシステム自体も少しずつ改良されている。当初は1アンケートにつき、5問5選択肢までしか設定できなかったが、2013年度春学期からは、最大10問10選択肢まで設定できるようになった。さらに、授業以外の環境でも利用できるように、2011年7月からは、CumocLの運用も始まっている。自由記述欄についても、設問がデフォルトであったが、2016年度秋学期には、自由記述の設問内容を変更できるようになった。また、同時期からは、各教員でCumocの回答を集計処理しやすく改良されている。一方、経営情報学部は、2015年度まで3学科編成であったが、改組して2016年度から経営情報学部経営総合学科1学部1学科体制になっている。学科改組に伴い、担当科目も「経営学入門」に変更になったため、あらためてCumocの使い方を見なおすことにした。「組織行動論」と同様に、「経営学入門」(春学期2コマ)も1年次最初にほぼ全学生が受講する科目であり、多岐にわたる学部の専門知識の導入部分として、しっかり勉強してもらう必要がある。2016年度は、新たな授業内容で取り組んだが、Cumocについては、15週中7週程度にして、授業の最終日にCumocを活用して授業に関する設問を提示し、回答してもらった。その結果、難易度もちょうどよいという意見が最も多く、社会にでてから役立ちそうだという学生が、9割に達しており、担当教員としては満足の行く結果であった。しかしながら、「経営学入門」の自習時間、すなわち授業以外で勉強した時間が1時間未満と答えた学生が6割に上っていることも同時に分かった。授業時間内で学習することはもちろん大切であるが、やはり知識として定着させ、将来にわたって、それらの知識を活用できるようになるために、自ら授業時間外に学習する態度も養う必要がある。そこで、2017年度―115―キューモ(Cumoc)による教育効果に関する実践報告

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