中部大学教育研究17
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1Cumocについて1.1中部大学のクリッカーシステムこの実践報告の目的は、筆者が8年間授業でCumocを活用し続けたプロセスで分かった授業における教育効果を紹介することである。Cumocを効果的に利用することで、どのような授業改善が可能であるのかを考えてみたい。本報告の構成は次の通りである。まず、Cumocは、中部大学のスマートフォンや携帯電話を活用したクリッカーシステムであるが、そもそもクリッカーシステムとは何で、どのような機能と効果があるのかを先行文献等からまとめる。次に、筆者自身がCumoc導入時から現在にいたるまで、どのように授業時間にCumocを活用してきたのか、8年間の変遷を報告する。そのプロセスにおいて、活用方法を何度か変更しておりその理由等も明らかにする。さらに、今年度から始めた予習に活用する試みやその効果を検討した上で、今後の課題を明らかにしていきたい。ここであらためて、Cumocという授業ツールについて説明しておきたい。Cumocとは、中部大学が独自に開発したモバイルクリッカー(ChubuUniversityMobileClicker)の愛称である。Cumocは、2008年度から中部大学が提供している「授業改善アンケート」システムにおいて、2010年度から運用がスタートした受講生がスマートフォンや携帯電話を利用して回答するクリッカー機能のことである。そもそもクリッカーとは、教員が作ったアンケートについて授業中に受講生からの回答をリアルタイムに集めて、その結果を教員と受講生が一緒に見ながら授業を進めていく双方向対話型の授業を構築していくツールである。クリッカー自体は、レスポンスアナライザー(集団反応分析装置)として市販の教育用ソフトや機器もあり、珍しいツールではないが、中部大学のCumocは回答する端末が学生自身が所有するスマートフォンや携帯電話であり、授業の受講登録と連動しているため、受講している学生のみが、担当教員が自由に作成した設問に答えることが可能になっている。中部大学では、ほぼすべての講義室でネットワーク環境とプロジェクタ等の映像装置が整備されているため、教員はPCさえあれば、すべての授業でCumocを活用することができる。また、選択設問だけでなく、自由記述欄があるため、学生からのコメントを回収することが可能になっている。市販のクリッカーシステムとは異なり、中部大学ならではの工夫が凝らされ、使いやすいツールであるといえよう。クリッカーシステムについては、中部大学に先行して佛教大学等も携帯電話を活用したシステムを開発しているが、中部大学のシステムを参考にして、その後いくつかの大学が―113―キューモ(Cumoc)による教育効果に関する実践報告-8年間の改善プロセスを中心に-寺澤朝子*要旨中部大学のクリッカーシステムであるCumocを活用した授業に関する実践報告である。先行研究から、クリッカーによる教育効果を明らかにしたのち、8年間におよぶCumocの実践を授業での活用方法とともに紹介する。基本的に選択肢の設問については、ロールプレイや復習、理解度の確認のために、自由記述欄については、学生らの意見や質問を吸い上げるために活用してきた。しかし、試行錯誤の中で、Cumocの使用頻度を授業内容に合わせて変化させてきたこと、学生のアイデアや意見を評価に加味するために自由記述欄の活用方法を変化させる必要があったことなどを述べる。また、2017年度から始めた授業外学習時間を増やすための予習にCumocを活用することで生じた学生の変化についても紹介する。キーワードCumoc、クリッカー、授業改善、授業外学習時間*経営情報学部経営総合学科教授

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