中部大学教育研究17
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受講前よりも受講後の方が有意に得点が高かった(F(1,89)=6.92,p<.05)。これらのことから、キャリア・アダプタビリティに関しては短期集中型の方が長期分散型よりも効果が見られたといえるだろう。コミュニケーション・スキルにおいては、表現力及び自己主張において群と時期の交互作用が有意であった(それぞれF(1,89)=4.82,p<.05,F(1,89)=7.47,p<.01)。表現力においては、短期集中型においても長期分散型においても受講前よりも受講後で得点が有意に低くなった(それぞれF(1,89)=21.11,p<.001、F(1,89)=5.83,p<.05)が、短期集中型での方がその効果が強かった。自己主張においては、短期集中型においては受講前よりも受講後で得点が有意に低くなった(F(1,89)=21.87,p<.001)が、長期分散型ではそのような変化は見られなかった。これらのことから、コミュニケーション・スキルにおいても、短期集中型の方が長期分散型よりも効果が強く表れたといえる。3.3受講前後の学びへの期待および学びの意味づけによる変化次に、「自己開拓」受講前に持っている学びへの期待、および受講後の授業への意味づけが、異なる教育効果を生み出すのかを検討するため、「自己開拓」受講群172名を対象として分析を行った。受講理由・意味づけ(自己理解・コミュニケーション・理由(意味づけ)なし)×調査時期(事前・事後)の2要因混合計画の分散分析を、各変数に対しておこなった。各平均値(標準偏差)とF値および有意水準について、Table2、Table3に示した。受講理由の各カテゴリー別人数は、自己理解の深まりは71名コミュニケーション・スキルの向上は29名理由なしは72名であった。また、授業への意味づけにおいては自己理解の深まりは46名コミュニケーション・スキルの向上は87名意味づけなしは38名であった。3.3.1自尊感情の変化受講理由、および意味づけのどちらにおいても、交互作用が見られた。受講理由においては、自己理解の深まりを期待していた学生にのみ、受講前よりも受講後で自尊感情が高まっていた(p<.001)。意味づけにおいては、自己理解の深まりおよびコミュニケーション・スキルの向上が見られたと感じた学生は、受講前よりも受講後で自尊感情が高まっていた(ps<.01)。また受講後は、意味づけをしなかった学生よりも自己理解の深まりを感じた学生の方が、有意に得点が高かった(p<.05)。つまり、自己理解の深まりを期待、実感していた学生や、コミュニケーション・スキルの向上を実感していた学生は、「自己開拓」受講により自尊感情が高まっていた。しかし、このような効果は受講理由がなかったり、意味づけをしない、できない学生には見られなかった。3.3.2進路選択に対する自己効力の変化受講理由も意味づけもどちらにおいても交互作用は有意ではなかったが、受講理由・意味づけカテゴリーの主効果および時期の主効果が、受講理由においては有意傾向、意味づけにおいては有意であったため、多重比較を行った。その結果、受講理由・意味づけどちらにおいても、受講前よりも受講後の方が得点が高くなる傾向があり(p<.10)、さらに理由なし群よりもコミュニケーション・スキルの向上を期待していた学生の方が高い傾向が見られた(p<.10)。つまり、受講理由が特になく、さらに受講の意味づけをしない、できない学生は、全体的に進路選択に対する自己効力が低いことが明らかになった。3.3.3時間的展望の変化受講理由においては、主効果および交互作用はともに有意ではなかった。意味づけにおいては有意傾向であったため、多重比較を行った。その結果、受講後において意味づけなし群よりもコミュニケーション群(p<.05)、意味づけなし群よりも自己理解群(p<.05)の得点が有意に高かった。さらに、意味づけなし群においては受講前よりも受講後の方が得点が有意に低い傾向が見られた(p<.10)。また、時間的展望の下位概念である希望においては意味づけにおいて交互作用が有意であったため、多重比較を行った。その結果、受講後において意味づけなし群よりも自己理解群(p<.05)の得点が有意に高かった。さらに、意味づけなし群においては受講前よりも受講後の方が得点が有意に低く(p<.05)、自己理解群は受講前よりも受講後の方が有意に高い傾向が見られた(p<.10)。受講理由においては主効果も交互作用も見られなかった。過去受容と目標志向性に関しては、受講理由および意味づけにおいて、どちらも時期の主効果が見られた。過去受容においては、受講理由および意味づけにおいて、受講前より受講後の方が有意に低かった(p<.05)。目標志向性においては、受講理由および意味づけにおいて、受講前より受講後の方が有意に高かった(それぞれp<.10、p<.05)。現在の充実感に関しては、意味づけでのみ意味づけカテゴリーの主効果の有意傾向が見られたが、多重比較では有意な差は見られなかった。―104―中部大学教育研究No.17(2017)

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