中部大学教育研究17
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.10)。これまでの教育効果では、安定的に「自己開拓」を受講している学生にのみ効果が見られてきたが、今年度は「自己開拓」を受講していない学生も半年間で進路選択に対する自己効力が向上していることが示された。3.1.4時間的展望の変化時間的展望全体としては、群および時期の主効果および交互作用は有意ではなかった。そこで、時間的展望をより詳細に検討をしたところ、過去受容と目標志向性において時期の主効果が見られた。過去受容においては事前のほうが事後よりも得点が高く(p<.001)、目標志向性においては事前よりも事後の方が得点は高くなっていた(p<.05)。つまり大学生活が進むにつれて、学生は過去を受容しづらくなるが、目標を持って将来に立ち向かえるようになる。さらにこれは「自己開拓」を受講してもしていなくても差はないことが示された。これまでの教育効果としては、「自己開拓」を受講した学生においてのみ時間的展望は向上していたが、2016年度においてはそのような効果はみられなかった。3.1.5キャリア・アダプタビリティの変化キャリア・アダプタビリティにおいては、自信において群と時期の交互作用が有意傾向であった。単純主効果検定の結果、事後において統制群より受講群の得点が有意に高かった(p<.05)。さらに受講群では事前より事後において得点が高くなっていた(p<.01)。また、関心、コントロール、好奇心においては時期の主効果が見られ、事前よりも事後のほうが得点が高くなっていた(それぞれp<.05、p<.01、p<.05)。これらのことから、「自己開拓」を受講することによって、キャリアにおける新しいあるいは変化した環境に適応できる資質としての自信が高くなることが示された。これまでの教育効果としては、「自己開拓」を受講することでキャリア・アダプタビリティの各側面が向上していたが、関心やコントロール、好奇心に関しては、「自己開拓」の受講にかかわらず、時期が進むにつれて高くなっていくことが示された。3.1.6コミュニケーション・スキルの変化コミュニケーション・スキルにおいては、表現力、自己主張、他者受容、関係調整に群と時期の交互作用が見られた。単純主効果検定の結果、表現力は受講群では事前より事後の得点が有意に低かった(p<.01)。自己主張も表現力と同様、受講群では事前より事後の得点が有意に低かった(p<.001)。さらに、事後は統制群の方が受講群より得点が高かった(p<.05)。他者受容に関しては、統制群は事前より事後の得点が有意に高くなる(p<.05)のに対し、受講群は事前より事後の得点が有意に低くなる傾向がある(p<.10)ことが明らかになった。さらに、事前を比較すると統制群より受講群は得点が有意に高かった(p<.05)。関係調整に関しては、有意な単純主効果は見られなかった。これらのことから、「自分の考えや気持ちをうまく表現する」という表現力および「自分の意見や立場を相手に受け入れてもらえるように主張する」という自己主張に関しては、「自己開拓」を受講することで得意に感じる程度が低くなることが示された。また、「自己開拓」を受講する学生は、「相手を尊重して相手の意見や立場を理解する」といった他者受容をできていると自己を評価しているが、授業後にはそのような自己評価が下がることが示された。この結果は、2015年度の結果と概ね一貫していた。3.2短期集中型と長期分散型の教授法による教育効果の違いが見られた心理的変化次に、短期集中型と長期分散型の教授法での、教育効果の違いについて検討を行った。短期集中型33名、長期分散型58名を対象に、自尊感情、進路選択に対する自己効力、時間的展望、キャリア・アダプタビリティ、コミュニケーション・スキルにおいて、短期集中型と長期分散型による教育効果の違いが見られた心理的変化のみ報告する。まず、自尊感情、進路選択に対する自己効力、時間的展望においては、教授法の主効果も交互作用も見られなかった。つまり、これらの心理的変化は教授形態で違いは見られなかった。キャリア・アダプタビリティにおいては、コントロール、好奇心、自信の3下位概念においては、群と時期の交互作用が有意または有意傾向であった(それぞれF(1,89)=9.47,p<.01、F(1,89)=3.15,p<.10、F(1,89)=4.25,p<.05)。コントロールにおいては、受講前に長期分散型群の方が短期集中型群よりも得点が高かったが(F(1,89)=7.44,p<.01)、受講後はどちらも変わらなかった。また、短期集中型の学生は受講前に比べ受講後は有意に得点が高くなった(F(1,89)=11.28,p<.01)。好奇心においては、受講前は群の差は見られなかったが受講後は短期集中型の方が長期分散型よりも得点が有意に高かった(F(1,89)=6.01,p<.05)。さらに、短期集中型は受講前よりも受講後の方が有意に得点が高かった(F(1,89)=6.83,p<.05)。自信については、受講前は群の差は見られなかったが受講後は短期集中型の方が長期分散型よりも得点が有意に高かった(F(1,89)=13.14,p<.001)。さらに、短期集中型は―103―キャリア教育科目「自己開拓」の教育効果

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