中部大学教育研究17
111/224

育を専門としない専任教員が実施する「自己開拓」で一貫した長期的教育効果を生み出すことができるようになれば、本学における授業に関する新たな発展可能性や方向性が見いだせる。とりわけ、教育効果の検証については、より詳細な検証が必要となる。本研究では、1年次の「自己開拓」受講前の学習や進路に対する意識や態度、2年次以降のそれらの変化について、十分に考慮できていない。また、進路選択・決定には課外活動など、その他の様々な変数が影響する。そのため、教育効果をより詳細に検証するためにもこれらの変数を統制することが求められ、研究方法のさらなる精緻化が望まれる。現在、「自己開拓」は受講希望者が履修可能人数を超過しているため、受講希望者全員が受講できるわけではない。しかし、「自己開拓」の特徴である学部・学科を横断したグループワークは、キャリア形成を大きく促すため希望者全員が受講できる環境を整えることは非常に重要である。学部・学科の専任教員によって「自己開拓」を担当することが可能となれば、学生が「自己開拓」を受講できるチャンスを拡大し、本学全体の就職率向上のみならず、その後の教員―学生間、また学生同士のコミュニティ構築に貢献し、学生の大学での居場所づくりにつながるだろう。その効果は、学習意欲の向上、さらには、大学の退学率の低下に資することが期待できる。さらに、現在の「自己開拓」プログラムは、キャリア教育を専門とする教員による授業では教育効果を有していることが明らかにされているが、より一層の教育効果を生み出すプログラムの開発も同時に必要となる。「自己開拓」では、今回取り上げた2コマ続きのプログラムでは開講に制限がかかることから、半期1コマで実施できるプログラムも独自に開発されてきた(佐藤・杉本・寺澤,2017)。これらのプログラムに関する短期的・長期的教育効果は十分に蓄積されてきており、課題も浮き彫りになりつつある。そのため、こうした課題を乗り越え、より高い教育効果が得られるよう新たなプログラムを開発することも今後の重要な課題といえるだろう。文献ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文・小塩真司(2011).新たなキャリア教育科目の効果-「自己開拓」の概要と学生の成長-中部大学教育研究,11,43-47.小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文(2011).新たなキャリア教育科目の効果-「自己開拓」による学生の心理的変化-中部大学教育研究,11,49-54.小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文・後藤俊夫(2012).キャリア教育科目「自己開拓」の効果-2011年度の授業について-中部大学教育研究,12,105-110.佐藤友美・小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文(2013).キャリア教育科目「自己開拓」の効果-2012年度の授業について-中部大学教育研究,13,43-49.佐藤友美・小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文(2014).キャリア教育科目「自己開拓」の効果-2013年度の授業について-中部大学教育研究,14,67-73.佐藤友美・杉本英晴(2015).キャリア教育科目「自己開拓」の効果-2014年度の授業について-中部大学教育研究,15,19-28.佐藤友美・杉本英晴(2016).キャリア教育科目「自己開拓」の教育効果-2015年度の授業について-中部大学教育研究,16,79-88.佐藤友美・杉本英晴・寺澤朝子(2017).キャリア教育科目「自己開拓」の教育効果-2016年度の授業について-中部大学教育研究,17,99-111杉本英晴・佐藤友美・寺澤朝子(2014).キャリア教育科目「自己開拓」の長期的教育効果-就職ガイダンスへの参加状況及び卒業時点の進路状況からの検討-中部大学教育研究,14,15-20.杉本英晴・佐藤友美・寺澤朝子(2015).キャリア教育科目「自己開拓」が進路決定を促すメカニズム―授業に対する意味づけからの探索的検討―中部大学教育研究,15,5-12.高橋哲也・星野聡孝・溝上慎一(2014).学生調査とeポートフォリオならびに成績情報の分析について-大阪府立大学の教学IR実践から-京都大学高等教育研究,20,1-15.注1)本研究は、中部大学特別研究費CP(課題番号:28ⅠL02CP)の助成を受けた。謝辞本調査にご参加いただいた学生の皆様に、心より感謝申し上げます。また、本研究にご協力いただいた全学共通教育部、経営情報学部共通教育科、キャリア支援課、教務支援課、各学部事務室に、厚く御礼申し上げます。―97―専任教員によるキャリア教育科目「自己開拓」実施の長期的教育効果

元のページ  ../index.html#111

このブックを見る