中部大学教育研究17
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択・決定に関するさまざまな指標をもとに、「自己開拓」の短期的・長期的教育効果が実証されている。ただし、「自己開拓」1期生および2期生においては、キャリア教育科目として「自己開拓」プログラムの導入過程の第一段階であり、プログラムを開発したキャリア教育を専門とした外部講師によって授業が実施されてきた。大学におけるキャリア教育では、キャリア教育を専門とする専任教員が十分に確保できない場合に、キャリア教育を専門とする外部講師へのアウトソーシングに頼らざるを得ず、「自己開拓」でも採用されてきた。しかし「自己開拓」は、中部大学の専任教員による実施、すなわち、キャリア教育を専門としない専任教員による実施が目標とされている。そのため導入過程の第二段階として、キャリア教育を専門としない専任教員による「自己開拓」の実施が求められ、実際に「自己開拓」3期生・4期生には、キャリア教育を専門とする外部講師による授業に加え、キャリア教育を専門としない専任教員による授業が一部開講されることとなった。そこで本研究では、2012年度・2013年度に「自己開拓」を受講し2016年度・2017年度に卒業を迎えた3期生・4期生において、2010年度・2011年度に「自己開拓」を受講した1期生・2期生と同様に、進路選択・決定の観点から長期的教育効果が見出されるか検証することを目的とする。具体的には、キャリア教育を専門としない専任教員が実施した場合でも、キャリア教育を専門とした外部講師と同様の長期的教育効果がみられるかを検証すべく、キャリア教育を専門とする教員による授業と専門としない教員による授業との比較を通して、進路選択・決定について検討することを目的とする。キャリア教育を専門としない教員が実施する「自己開拓」においても長期的教育効果が認められるのであれば、杉本他(2014;2015)と同様、「自己開拓」の受講群は受講していない統制群に比べ、本学のキャリア支援課が主催する3年次の就職活動ガイダンスにより積極的に参加し、卒業時点での進路決定の比率が高いことが予想される。本研究により、専任教員が実施した「自己開拓」においても長期的教育効果が検証されれば、進路選択・決定を導くのは、「自己開拓」を担当する教員の授業運営の効果ではなく、「自己開拓」のプログラム自体の効果であることが示される。「自己開拓」のプログラム自体の効果が十分にあるのであれば、本講義をより多くの学生が受講できるよう課程内で拡充する際、アウトソーシングに頼ることなく専任教員担当による拡充が可能となる。その結果、学部・学科のさまざまな教員による「自己開拓」の実施が可能となり、結果として本学全体の就職率向上につながるだろう。一方、教育効果が明確に示されない場合であっても、教育効果がみられない原因を検討することが可能となり、本研究結果をもとに専任教員による教育方法を適切に改善していくことができるだろう。このように、本研究を継続していくことは、平成23年度に大学設置基準が改訂され「大学におけるキャリアガイダンスの推進」が高等教育における喫緊の課題とされる中、充実した「キャリア教育」を教育課程に位置付けている本学としての責務であり、本研究は、本学におけるキャリア教育の今後の方向性を定める上でも非常に意義があるといえよう。2方法2.1調査対象者調査対象者は、2012年度・2013年度に「自己開拓」を受講し、2016年・2017年の3月に卒業を迎えた学生339名(所属学部:工学部・経営情報学部・人文学部)と、同時期に卒業を迎えた学生で卒業までに「自己開拓」を受講しなかった学生から無作為抽出された355名(所属学部:工学部・経営情報学部・人文学部)であった。学部事務室経由で質問紙調査が配布され、後日回収された。そのうち回答に不備の見られなかった調査対象者の中で2012年度・2013年度の入学者で1年次に「自己開拓」を受講した学生172名(<「自己開拓」受講群>;有効回答率50.74%)と同時期に卒業まで「自己開拓」を受講しなかった学生234名(<統制群(非受講群)>;有効回答率65.92%)の計406名(「自己開拓」受講群:男性131名、女性41名;統制群(非受講群):男性171名、女性63名)を分析対象者とした。平均年齢は21.89歳(SD=0.64)であった。2.2調査内容就職ガイダンスへの参加状況キャリア支援課が主催した就職ガイダンスへの参加の有無についての情報を得た。なお、この就職ガイダンスは調査対象者が3年次に行われたガイダンスで、オリエンテーション、適職診断テスト、適職診断テストをもとにした自己理解ワークショップ、業界・職種ワークショップ、就職試験対策、履歴書作成ワークショップ、履歴書個別添削、SPI対策模擬テスト、面接対策ガイダンス、学内企業説明会事前ガイダンスという構成であった。調査時点の進路状況調査時点の就職活動状況および進路先について回答を求めた。就職活動の状況(まだ行っていない、就職活動中、就職活動を終えた)に回答を得た上で、具体的な進路先について自由記述による回答を求めた。大学卒業時点の進路状況大学卒業後の進路先(卒―92―中部大学教育研究No.17(2017)

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