中部大学教育研究16
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そこで、コミュニケーション・スキルにおいて、教授法によって変化が異なるかを明らかにするため、教授法(従来・新規)×調査時期(事前・事後)の2要因混合計画の分散分析をおこなった。その結果、自己統制、表現力、解読力、自己主張、他者受容、関係調整、いずれのコミュニケーション・スキルにおいても、主効果および交互作用は有意ではなかった。つまり、教授法、つまり授業目的によってコミュニケーション・スキルの向上に差はなかったといえる。3.2受講前後の学びの意味づけによる変化「自己開拓」を受講しても、その意味づけは学生によって異なる。授業で学んだことを意味づけさせた結果、(1)自己理解の深まり、(2)コミュニケーション・スキルの向上、(3)意味づけなし、の3カテゴリーに分けられた。どのように意味づけるか、また意味づけをしないかによって、それを内在化したり高めたりする程度は異なってくると考えられる。そこで、「自己開拓」受講群において、意味づけ(自己理解・コミュニケーション・意味づけなし)×調査時期(事前・事後)の2要因混合計画の分散分析を、各変数に対しておこなった。各平均値(標準偏差)とF値および有意水準について、Table2に示した。3.2.1自尊感情の変化自尊感情においては、意味づけと調査時期の主効果および交互作用は見られなかった。自尊感情に関しては、意味づけは変化に影響を与えないことが示された。3.2.2進路選択に対する自己効力の変化交互作用は有意ではなかったが、意味づけの主効果が有意であったため、多重比較を行った(Fig.6)。その結果、自己理解群は意味づけなし群よりも有意に高い得点であり、またコミュニケーション群は意味づけなし群よりも有意に高い得点であった(ps<.001)。つまり、意味づけをしない、もしくはできない学生は、全体的に進路選択に対する自己効力が低いことが明らかになった。3.2.3時間的展望の変化交互作用は有意ではなかったが、意味づけの主効果が有意であったため、多重比較を行った。その結果、またコミュニケーション群は意味づけなし群よりも有意に高い得点であった(p<.05)。つまり、意味づけをしない、もしくはできない学生は、全体的に時間的展望の広がりが低いことが明らかになった。また、時間的展望の各下位概念においては、過去受容および現在の充実感において差は見られなかった。しかし、目標志向性と希望においては主効果がみられた(希望のみFig.7)。いずれにおいても自己理解群は意味づけなし群よりも有意に高い得点であり、またコミュニケーション群は意味づけなし群よりも有意に高い得点であった(ps<.05)。つまり、現在と過去に関する時間的展望には差がないものの、将来に関する時間的展望に差がみられ、意味づけをしない、もしくはできない学生は、将来に対する展望の広がりが低いことが明らかになった。Fig.7希望の時期による変化3.2.4キャリア・アダプタビリティの変化4下位概念において、いずれの交互作用も有意ではなかったが、すべての概念において意味づけの主効果が有意であったため、多重比較を行った。その結果、関心とコントロールにおいては、コミュニケーション群は意味づけなし群よりも有意に高い得点であった(ps<.05)。好奇心と自信においては自己理解群は意味づけなし群よりも有意に高い傾向があり(ps<.10)、コミュニケーション群は意味づけなし群よりも有意に高い得点であった(ps<.05)。このことから、意味づけをしない、できない学生は、キャリア・アダプタビリティも低い傾向があることが示された。―84―佐藤友美・杉本英晴Fig.6進路選択に対する自己効力の時期による変化

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