中部大学教育研究16
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Fig.3時間的展望「希望」の時期による変化3.1.5キャリア・アダプタビリティの変化キャリア・アダプタビリティにおいては、4側面全てにおいて群と時期の交互作用がみられ、単純主効果検定の結果、全ての側面で事後において統制群より受講群の得点が有意に高くなった(ps<.01)。さらに、どの側面においても受講群では事前より事後において得点が高くなっていた(ps<.001)。つまり、「自己開拓」を受講することによって、キャリアにおける新しいあるいは変化した環境に適応できる資質としての、関心、コントロール、好奇心、自信がともに高くなることが示された。3.1.6コミュニケーション・スキルの変化コミュニケーション・スキルにおいては、自己統制、自己主張、他者受容、関係調整については群においても時期においても変化が見られなかった。表現力に関しては群と時期の交互作用がみられたため、単純主効果検定を行った(Fig.4)。その結果、事後において統制群より受講群の得点が有意に低かった(ps<.01)。つまり、「自分の考えや気持ちをうまく表現する」という表現力に関しては、「自己開拓」を受講することで得意に感じる程度が低くなることが示された。また、解読力に関しても同様の傾向が見られた。群と時期の交互作用の傾向がみられたため単純主効果検定を行った(Fig.5)。その結果、事後において統制群より受講群の得点が有意に低かった(ps<.01)。ただし、事前において統制群より受講群は有意に得点が高かった(ps<.05)。つまり、「相手の伝えたい考えや気持ちを正しく読み取る」という解読力に関して、受講群は授業前には得意であったが、授業を受けることによってその程度が低くなることが示された。Fig.4コミュニケーション・スキル「表現力」の時期による変化Fig.5コミュニケーション・スキル「解読力」の時期による変化3.1.7教授法によるコミュニケーション・スキルの変化前述したとおり、従来の教授法と新規の教授法では、授業の目的がコミュニケーション・スキルにおいて異なっていた。具体的には、新規の教授法では従来のものに比べ、より他者との積極的なコミュニケーションを求めている授業展開となっている。シラバスを比較しても、従来の教授法での具体的な目的は、(1)自分のことをこれまでより深く知ることができる、(2)他者とのかかわり方を学ぶことができる、(3)グループにおける自らの役割を知ることで協同して作業することを学ぶことができる、(4)他者の人生を知ることで、自分自身の人生や働くことの意味を考えることができる、のように自己を知ることが主眼となっている。これに対し、新規の教授法では(1)自己と他者を理解できる(1~5回)、(2)組織的な活動に建設的に参加できる(6~10回)、(3)所属する組織を成功に導くよう仲間と力を合わせて活躍できる(11~14回)、のように他者とのやりとりのスキル向上を主眼としている。―82―佐藤友美・杉本英晴

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