中部大学教育研究16
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を実施した。統制群については、「自己開拓」を受講していない一般教養科目の受講生に対し、自己開拓と同時期に事前テストと事後テストが実施された。調査参加者は、受講群140名、統制群175名であった。3結果と考察3.1授業前後の受講・統制群の変化群(受講者群・統制群)×調査時期(事前・事後)の2要因混合計画の分散分析を、各変数に対しておこなった。各平均値(標準偏差)とF値および有意水準について、Table1に示した。3.1.1パーソナリティの違い5つの側面の中で、外向性のみ群の違いと調査時期の違いが見られた。受講群の方が統制群よりも有意に外向性が高く(p<.05)、また授業前よりも後の方が外向性が高くなった(p<.05)。つまり、外向性が比較的高い学生が「自己開拓」を受講する傾向があることが示された。これは、「自己開拓」の授業形態が他者との活発なやりとりを含むことがシラバスや先輩からのアドバイスによって周知されており、そのようなやりとりに自信のある学生が履修選択している可能性を示している。また、秋学期はじめに比べて、秋学期の終わりには大学にも慣れ、友人関係がより広がったり深まったりすることから、全体的に積極性が高まって外向性が高くなっていると推察される。3.1.2自尊感情の変化群と時期の交互作用が有意傾向であったため、単純主効果検定を行った(Fig.1)。その結果、受講群でのみ事前よりも事後で自尊感情得点が高くなっていた(p<.01)。これは、小塩他(2011)、小塩他(2012)、佐藤他(2013)、佐藤他(2014)と一貫した結果となっている。つまり、「自己開拓」を受講することで、自分を肯定的に捉えられるようになり、自信を持てるようになることが示された。Fig.1自尊感情の時期による変化3.1.3進路選択に対する自己効力の変化群と時期の交互作用が有意であったため、単純主効果検定を行った(Fig.2)。その結果、受講群でのみ事前よりも事後で進路選択に対する自己効力得点が高くなっていた(p<.001)。さらに、事後では統制群より受講群において進路選択に対する自己効力が高くなっていた(p<.001)。つまり、授業前は「自己開拓」を受講している学生も受講していない学生も、進路選択に対する自信は同程度であるが、「自己開拓」を受講したときのみ、その自信が上がることが示された。Fig.2進路選択に対する自己効力感の時期による変化3.1.4時間的展望の変化時間的展望に関して、群と時期の交互作用が有意であったため、単純主効果検定を行った結果、受講群でのみ事前よりも事後で得点が高くなっていた(p<.05)。つまり、将来や過去の事象が現在の行動に影響するという時間的展望の広がりは、「自己開拓」を受講した学生は高くなったことが示された。そこで、時間的展望のどの側面が高くなったのかを明らかにするため、より細かく検討をしたところ、過去受容、現在の充実感、そして目標志向性には変化が見られなかったものの、希望において群と時期の交互作用が有意であったため単純主効果検定を行った(Fig.3)。その結果、事後において統制群より受講群の得点が有意に高くなった(p<.01)。さらに、受講群では事前より事後において得点が高くなる傾向が見られたのに対し、統制群では事前より事後において得点が低くなる傾向が見られた(ps<.10)。つまり、大学生活が進むにつれて、学生は将来への明るい展望を持ち、自らそれを切り開いていくという自信を持ちづらくなるが、「自己開拓」を受講することによって、逆に将来に対する希望を持てるようになることが示された。―81―キャリア教育科目「自己開拓」の教育効果

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