中部大学教育研究16
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LL教室、CALL教室の両教室に共通する機能は、学習者の状況のモニタリングである。教員は教卓コンソールから、ヘッドセットを通して、たとえばペアやグループ学習、個別学習の状況をモニターすることができる。机間観察による学習状況のモニターと、ヘッドセットを通したモニターとの大きな違いは、学習者に気付かれずにモニターできるという点だといえよう。学習者同士がどのような点につまづき、それをどのように解消し、学習を進めていくかを観察しながら、それをモニター対象者へ、またはクラス全体へとフィードバックしていくことをタイムリーに行えることも、LL教室やCALL教室の強みである。では、なぜ1年次にCALL教室、2年次にLL教室を活用しているのかにも理由がある。CALLにはパソコンが並んでおり、それが教卓と結びついていて一つのネットワークを構築してくれる。そこにはネットに繋がった環境もあり、e-Learning教材にも繋がっている。1年次はそうした繋がりを全て活用する授業を行い、高校までに受講してきた英語授業とは異なる学習者にとっての効率性や授業時間を無駄に過ごさせない授業内容に慣れさせ、自分が語学学習の主体であることを自覚させるための手だてとしている。しかしこれだけを継続していくと、学生は「語学はパソコンを通してするもの」とした印象のみを得てしまうかもしれない。そこで2年次には、目の前にパソコンが並んでいない環境下で、しかし教員が学習状況をモニターできるというLL機能だけを残したく、LL教室を活用した授業を行うこととした。1年生C/Dクラス以外は、多目的演習室を活用した時間がある。それは少しでも「人と人との距離」を縮め、対面授業の中でペアワークやグループワークを一層しやすいようにするためである。一方、1年生C/Dクラスには、2コマ連続という時間がある。パソコンが目の前にあることが支障とならず、人と人とがコミュニケーションしながら学ぶ機会を2コマの間に用意し、人と学ぶ、人から学ぶ経験も豊かにしようとしている。4.2e-Learningの積極的活用このカリキュラムでは、入学時から2年間を通して次の2つのe-Learningが活用されている。教材作成Webプラットフォーム「Glexa」(株・Version2):学習者の実状に適したタスクを用意し、意欲や動機の変化、習熟度に即してタイミングよくタスクを実践させることが可能。「ATRCALLBRIX」(株・内田洋行):録音採点付きの語彙や文の発音練習を通して、英語を口から出すことへの抵抗感を軽減しリスニング力を向上させることが可能。の「Glexa」は、限られた授業時間90分で学習の量と質の両方を高めるものとして活用されている。たとえば従来の授業において語学教員が当たり前に行ってきている練習問題の正解チェックなどは、「Glexa」を活用により瞬時に終えることができる。それにより得られた時間は、習得を深めたり、未習得部分の補強に費やしたりすることが可能可能である。また、たとえばリアルタイムで得られる練習問題の正解率や学生の得点などに関する情報は、その授業内の次の段階に反映していくことも可能である。教員は各授業でのいわゆる「丸つけ」作業時間を必要最低限に抑えることができ、その分、次の授業準備に時間を費やすことも可能である。学生に宿題を課すような場合、Webベースである「Glexa」を活用すると、学生はネット環境下であればいつでもどこからでも課題に取り組むことができる。さらに「Glexa」では課題の受講回数を自由に教員が設定できるため、繰り返し受講して習熟度を上げさせることもできる。一方の「ATRCALLBRIX」は、授業時間だけでは足りない個別トレーニング機会を与えられるものとして活用されている。たとえば単語レベルの発音練習に限られた授業時間を割くことはかなり難しい。ER学科においては、「ATRCALLBRIX」開始時に学習方法やその効果に関する講座を行ったり、1年次2コマ連続の授業があるC/Dクラスでは、授業内で「ATRCALLBRIX」を使った発音指導を行ったりしている。学習状況や英語習熟度に応じて、学期中に「ATRCALLBRIX」補習時間を設け指導を行うこともある。これは、このようなトレーニング経験を経て、各自が2年次以降も主体的にトレーニングに取り組めるよう足場かけを意図するものである。e-Learning学習は誰にも気軽にアクセスできるものであるはずであるが、その学習効果が個々の学生に納得できない限り、その学習はノルマ化してしまうこともある。それを避けるための取り組みが、入学時からの具体的な発音トレーニングである。ER学科では「ATRCALLBRIX」を活用し単語レベルの発音や聞き取り練習だけでなく、「文を聞き取れるようになる」ためのトレーニング方法として、文のプロソディ(韻律)習得に重点を置いた指導を継続している。4.3主体的学習の促進本学語学センターにある語学専用自習室「SIRoom」には、CALL教室のブースと同様のスピーキングブース、ネット環境が整備された学習スペースがある。学―75―ロボット理工学科英語強化カリキュラム

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