中部大学教育研究16
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e-Learning教材[ATRCALLBRIX]を用いたリスニング・スピーキング素地力育成語学専用自習室を利用した自律的学習者の育成45分か180分かという違いはあるが、いずれのクラスにも①CALL教室を活用し、②一斉授業時間を最小限にし、③アクティブラーニングを軸として授業が展開され、④SIRoom(語学専用自習室)での利用を促し、⑤e-Learning教材での基礎訓練を行わせていることが共通している。しかし、A/BクラスとC/Dクラスが異なる点は、単に90分か180分かという授業時間の違いだけではない。CALL教室での授業といえば、パソコンに学生が静かに向い、黙々と個々のペースで個別学習を進めていくような授業がイメージされがちだが、ここで実践されている授業は「動」と「静」から成っている。CALL機能を駆使したペア学習やそのモニタリング(教師によるヘッドセットを介したアクティビティ観察)が行われることもあれば、ヘッドセットを外し、生の声を使い、ノンバーバルコミュニケーションも指導に入れたペア学習を行う場面もある。授業終了までの180分間には、ペア学習や一斉指導をもとにし、アクティブ性を重視したタスクと、インナーアクティブ性を重視したタスクとが織り込まれており、学生の英語が教室内に多く響く180分間となっている。2年間を通して、このカリキュラムで学生が体験する学習方法のブレンドは、次の3つのタイプに分類される。CALL教室のみを利用した授業(1年生C/Dクラス)対面授業:CALL機能利用あり対面授業:CALL機能利用なし自主学習:オンライン自主学習:オフラインCALL教室と演習室を利用した授業(1年生A/Bクラス)対面授業:CALL機能利用あり対面授業:CALL機能利用なし対面授業:オフライン(演習室)自主学習:オンライン自主学習:オフラインLL教室と演習室を利用した授業(2年生全クラス)対面授業:LL機能利用あり対面授業:LL機能利用なし対面授業:オフライン(演習室)自主学習:オンライン自主学習:オフラインブレンディッドラーニングとは、単にオンラインとオフラインの混合を意味するものではない。また、ブレンドは必ずしも必要なものでもない。しかし、ここで探究が始まっているのは、授業の質を向上させるための努力であり、カリキュラム目標と各学年の授業の特性に照らし合わせて上記~のような学習環境のバリエーションから最適なものを選び、さらには各環境下において~のような学習形態から最適なものを選んで授業を実践していくことである。3.2コラボレイティブ・ティーチング複数の教員がチームを編成し授業を実践するチーム・ティーチング(teamteaching)はもはや珍しいことではないが、このカリキュラムでの新たな取り組みの1つに、複数教員によるコラボレイティブ・ティーチング(collaborativeteaching)すなわち協調的授業実践への挑戦がある。複数教員が異なる教室環境で1クラスの授業を実践するハイブリッド授業を行う最大の理由は、週90分間しかない授業時間内に複数の教員や授業形態、異なる授業空間、英語トレーニング方法を体験させることである。こうした授業は教員が単独で1クラスを担当するよりも学生の状況や授業進行、学習内容を共有できる。特に英語母語話者との協働クラス運営では、複眼的視点から学習者の潜在能力を引き出すことに役立っており、教員自身もリレー式授業から学ぶことが多い。1年次も2年次も、授業プランと実践記録の共有は、GoogleDriveを用いて担当者全員で行っている。互いの授業プランから教授法の選択、アクティビティスタイルの選択や実践方法まで共有できることで、教員同士が互いに指導力を高め合うことができている。また、これにより複数教員で学科の学年全員を担当する連帯感や協働気質も得られている。互いの授業を観察し合うことを通して、授業空間が孤立してしまうことも避けることができ、教員間の信頼関係も築きながら1つのカリキュラムを構成しようとすることもできてきている。4語学アクティブラーナーの育成4.1学習環境週1回に限られた授業時間の中で、学生にどのくらいの英語力を定着させ得るかどうかは、授業と授業外の学習をどのように連結させるかが鍵となる。このカリキュラムにおいて、授業時間内の学習の質を向上させ、対面授業と自主学習を含む個別学習をブレンドするために最大限に活用されているのは、授業環境とe-Learningシステムである。その特徴は、1年次のCALL教室活用、2年次のLL教室活用、そして両学年での演習室活用にもある。―74―小栗成子・高丸尚教・関山健治・デイビッドアレン・加藤鉄生

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