中部大学教育研究16
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1はじめに平成26年度、本学にロボット理工学科(以下、ER学科)が新設された。入学者が将来専門分野に携わっていくには、世界の様々な英語使用者と意見・情報交換、相互理解できる英語コミュニケーション能力が不可欠となってきている。こうした時代に活躍できる人材養成をめざして、ER学科は語学センターと共にあらたに独自の英語強化カリキュラムの構築を開始した。本稿では、ER学科における英語カリキュラムの2年目までの実践について、平成26~27年度入学者の成果とともに報告する。2授業体制と教授法1~2年次の英語授業においては、学科教員が語学教員と常に連携し、授業観察や学生の学習状況などに関する情報共有を綿密に行っている。2.1強化カリキュラムの概要工業高校出身者も含まれるER学科学生の英語力は、入学時点では概ね英検準2級から5級という格差がある。入学時点での英語力とER学科における人材育成描像との差を打破すべく、入学から卒業までの英語教育方法を構築しようとしている。1年次の達成目標は、次の5点を緩やかに開始することにある。①心理的バリアの軽減:英語への抵抗感や嫌悪感の緩和と英語学習への再挑戦②未開発能力の育成:リスニングの基礎力育成とコミュニケーション能力素地の育成を優先③学習基盤の形成:Pre-A1(英語能力到達指標CEFR-J)以下のレベルからの脱出④自己調整能力の育成:いかなる領域での学習にも通じる主体的な学習能力の形成⑤異文化受容力・適応力の育成:異文化間コミュニケーションに必要とされる人間力の形成2年次の達成目標には前述の5点を継続しながら、さらに次の2点を加えている。⑥言語観の育成:科目としての語学を越え、自己実現力の一助となる自身の母語や英語を含む外国語に対して視野を広げる。⑦自律的学習者の育成:授業外、単位取得後において必要な語学力を習得しようとする意欲を育てる。この英語カリキュラムでは、年度開始前にCASEC(英語コミュニケーション能力判定テスト)によるクラス分けを行い、1~3年次の英語授業を4クラス(各クラス20名前後)で展開している。平成26年度の開始から現在まで、1年次は日本語母語話者教員2名(小栗、関山)が、2年次はそれに英語母語話者教員1名(アレン)を加えた3名が、各学年約80名の授業を担当している。2.2プレースメントテストとクラス構成週1回という限られた授業時間の中で、「ことばとしての英語」力の形成をめざそうとする際に不可欠なのは、まず目標に即したクラス分けと、クラスサイズの制限、適切なレベルの教材選定と教授法の選択であろう。クラス分けにはCASECを用い、各クラスの人数は20~35名程度とした。CASECとは、日本英語検定協会が基礎開発を行い、その後旺文社グループの(株)教育測定研究所が開発・運営を行っている英語コミュニケーション能力判定テストのことで、語学センターが平成23年度から希望者を対象に年間随時試験実施してきているものである。CASECはWebで受験をするテストで、所要時間は1時間程度、そのうち受験時間は40分程度である。受験者の回答に合わせてテスト問題が選ばれていくコンピュータ適応型テストシステムであるため、受験者には自分の英語力よりもはるかに難易度が高すぎる問題と格闘する負担がない。CASECスコアは試験終了と同時に表示され、英検の級目安、TOEIC、TOEFLITPの換算スコア、Can-Doリストや学習上の助言も添えられるため、受験者本人もその時点での実力を把握でき、受験後の学習計画にも役立てやすい。英語への抵抗感が深刻な学生が大きな負担を感じることなく、今までの定期テストや入試のような形式とは異なるテストを求めていたこと、リスニング/スピーキングを重視するカリキュラムに即したプレースメン―71―中部大学教育研究№16(2016)71-78ロボット理工学科英語強化カリキュラム-開始から2年目までの実践と成果の報告-小栗成子・高丸尚教・関山健治デイビッドアレン・加藤鉄生

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