中部大学教育研究16
80/128

5考察情報機器の利用状況、情報機器を利用した教材の視聴状況、情報機器を活用した看護技術の指導に関する示唆について、考察を述べる。5.1情報機器の利用状況対象学生は全員パソコンとスマートフォンあるいはタブレットを所持しており、これらの情報機器を講義等に活用することにより、不利益になるような学生はいない状況であった。対象学生のほとんどは19歳~20歳であり、平成14年4月からの新学習指導要領の改訂により、情報教育や教科指導におけるICT活用(ICT:コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報コミュニケーション技術)など、教育の情報化に関わる内容について一層の充実が図られた世代である9)。このことからも、情報機器を看護基礎教育に積極的に活用していくことが可能なレディネスであると考えられた。5.2情報機器を利用した教材の視聴状況教材Aに必要なQRコードでの動画の視聴と、教材Bに必要な専用アプリでの動画の視聴について、多くの学生が簡単にできると回答し、これら2つは共に難易度の高い行為ではないことが示された。しかし、これらに対して「困難である」あるいは、動画視聴していない理由に「機器の操作が苦手」と回答した学生も少数ではあるが存在しており、全ての学生が確実に動画視聴できるように、視聴方法を教授するなど個別の対応も必要であることが伺えた。また、動画視聴を妨げている主な理由は、通信容量制限やWi-Fi環境の問題であった。今回調査した教材Aの動画は平均3分であり、通信量は1分あたり9MBを要する。1つの動画としては、大きな通信量ではないが、一連の技術をイメージするには、複数の動画を視聴することが必要であり、繰り返しこれらの動画を視聴することは大きな通信量を要する。多くの学生が、通信容量の制限のあるスマートフォン等で動画を視聴している状況が推察されるため、視聴を妨げる要因になっているものと考えられた。吉川らは、看護技術の動画へのアクセス回数と総合評価得点、アクセス回数と実技試験得点は相関がみられることも述べており10)視聴を繰り返すことで技術のイメージ化ができ、技術修得につながると考えられる。複数回の視聴をしやすい環境を整えることが技術の修得のためには必要である。対象学生が在籍する大学には、Wi-Fiでのアクセス可能な場所を多く整備しており、これらの利用が有効になされれば、視聴への制限はなく効果的な学習につながると考えられる。学内のWi-Fi接続環境の案内などにより、学生が動画を視聴し易くする対応が必要である。教材C(e-learning上の教材)について、教材A・Bよりも視聴を困難と感じている学生の割合が有意に多いことが示された。表1に示す教材の特徴を見ると、教材Cについては、動画再生ソフトのインストールを要することや、巻き戻しや早送りの機能がなく、長時間の動画を毎回始めから視聴しなければならないというデメリットがある。これらは自由記載欄に利用を妨げる要因として記載されていた。また、パソコンよりもスマートフォンでの視聴がより利便性が高いという学生の意見を示す先行研究もあり11)、教材Cがスマートフォンからの視聴が不可能であることも一要因と考えられた。スマートフォンでの視聴可能な動画を提供することによって、学生の動画教材の利用を促進すると考えられた。5.3情報機器を活用した看護技術の教育に関する示唆動画教材を視聴した経験の有無と、情報機器の普段の使用時間および機器の操作について他者に質問することの有無には、有意な関連性は見られなかった。このことから機器を操作する機会や、機器の操作について他者に協力が得られるかなどの環境的な要因よりも、学生自身が視聴する必要性を感じることが、視聴に結びついていることが示唆された。対象学生は動画を見ながら、技術の根拠や気づいた点についての記載をした上で、学内実習で技術の実施する形態で技術を学んでいる。本来動画を視聴するという教育は、受身である。能動的な学習とし学生の視聴の動機づけを高めるように、技術の模範例を映した映像だけでなく、課題を入れ込んだ動画教材の有効性を示した先行研究も見られる12)。視聴する動機づけを高めるような働きかけが必要であると考えられた。多くの学生が自己練習の際に動画を視聴できると効果的と思っていた。対象学生が在籍する大学では、看護学実習室に大型モニターが整備されており、学生の意向も踏まえてこれらの活用などを検討することが必要であると考えられた。また、看護技術の学習に情報機器を利用することについての希望や考えに関する自由記載の内容には、教科書の動画と学内実習や、各動画教材間での使用物品や細かい手順の相違への戸惑いについて記載もあった。これらのことから、動画教材に技術の模範例を求めそれを模倣しようとする学生の学習傾向が窺えた。動画教材を自己練習に用いることは、授業等で学んだ点で忘れた部分をすぐに確認できる利点が有る。この反面、菅原らは授業後の自己学習での動画閲覧と技術修得に有意差は見られなかった結果から、自己学習での動画の視聴は、学生の「思い出―68―夏目美貴子・宮内義明・新美純子・嶋﨑和代・早瀬良

元のページ  ../index.html#80

このブックを見る