中部大学教育研究16
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1はじめにスタートアップセミナーは「高校から大学教育への円満な移行・接続」を目的として、入学者が、「生徒」(受動的に学ぶ学習者)から「学生」(将来を見据えて主体的に学ぶ学習者)へと自立するために、学修・学生生活の全般にわたるガイダンス・支援を行っていく、と初年次教育科目担当者会全体会議での配付資料に規定されている。国際関係学部の旧3学科(国際関係学科、国際文化学科、中国語中国関係学科。以下それぞれNN、NL、NCの略称を用いる)においても、上記の基本方針にのっとり、4つの「共通項目」(①大学の基本理念、教育上の使命、教育目的、②学生生活のライフプランとキャリアデザイン、③大学における学びのスキル、④社会生活の基礎)の内容に加えて、各学科の状況・教育目的に応じて「専門基礎・専門導入」を取り入れつつ、これまで同科目の授業を実施してきた。2016年度から従来の3学科を有機的に統合した「国際学科」は、学問領域の壁を取り払い、学びの自由度を飛躍的に高めるとともに、「ハイブリッド・プロジェクト」をはじめとするアクティブな学びの機会を整え、その歩みを始めることとなった。新生なった国際学科では、「知る」「話す」「体験する」という教育理念のもと、世界の人びとの生活に寄り添った「国際」を学び、「行動できる、心豊かな人間」を育成することをその教育の目標としている。本稿では、国際学科発足1年目の「スタートアップセミナー」授業実践について、「国際学科にふさわしいカリキュラム作成に向けて」「授業の実施方法」「包括的な新入生サポートを目指して実施した課外活動」に分けてそれぞれ報告したい。そして「おわりに」として、学期末に実施した学部独自のアンケート調査の結果を踏まえつつ、今学期における本学科「スタートアップセミナー」の授業実践から得られた知見と、今後の課題を記すことで本報告を締めくくりたい。本稿は、大澤が3.2.5の後半を、于が4.1、4.2を執筆し、その他の部分の執筆と全体的な調整を和田が担当した。2国際学科にふさわしいカリキュラム作成に向けて2.1学部独自の学習に関連する部分について2016年度の授業内容について検討が実際に始まったのは、2015年9月であった。それは、新学科発足に向けて開催されてきたタスクフォース会議にて討議された。このタスクフォースは、もともと2013年秋に学部改革タスクフォースとして発足したものが、2015年春からは新学科準備タスクフォースとして改組されたものである。最終的には主任会議を経て学部教授会での議決によるが、本タスクフォース会議は、カリキュラムの策定から新学部広報にわたる新学科発足に関する全ての事柄について検討する「任務部隊」であった。この組織は、当時の学部長、副学部長、学部長補佐、3学科主任、主任補佐と学部長の任命による者によって構成されていたが、基本的には学部教員であれば自由に参加できる「開かれた」ものであった。9月24日のタスクフォース会議では、スタートアップセミナーを含めた低学年演習科目担当予定者チームを組織し、1、2年次で一貫した指導体制を確立することが決定された。そこで、本学部学生に求められる知識とスキルを明確にし、各学年、各学期で到達すべきレベルを確認するために、3学科がこれまで実施してきた演習科目の授業内容を摺り合わせることになった。また、新学科のスタートアップセミナー担当責任者(予定)の和田が、主にこの作業の取りまとめを行うこととなった。国際関係学部では、かねてから1年生春学期の「スタートアップセミナー」から始まり、1年生秋学期の「基礎演習」、2年生においては「プレ演習A/B」(NN)、「研究入門A/B」(NL、NC)と、3年生からの演習履修(ゼミ配属)にかけて途切れることなく少人数クラスによる演習科目が設定されており、本学部のきめ細やかな学生指導の中核をなしている。3学科の低学年演習科目担当者の協力により作成した授業概要が【資料1】である。そこで判明したこととして、「論説文の読解能力の向上」「レジメ、レポート作成(法)の指導」「ポートフォリオの作成」「オフィスアプリケーション活用スキルの向上」「プレゼンテーション練習」など、おおよそ似通った授業内容である―55―中部大学教育研究№16(2016)55-642016年度、国際学科発足1年目におけるスタートアップセミナー授業実践の試み-チーム・ティーチングで包括的な新入生サポートを目指す-和田知久・于小薇・大澤肇

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