中部大学教育研究16
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とその家族を地域で暮らす生活者として理解する(目標1)」「利用者が安定した療養生活を継続するための支援の在り方について理解する(目標2)」「生活に密着した支援について理解する(目標3)」ために在宅看護論臨地実習を取り組む中で、家族と利用者の生活の様子や、利用者だけでなく家族の人生なども垣間見て、家族に目を向けることの重要性に気付いたのではないかと考える。また、実習施設の一つが「滞在実習」という実習スタイルを設けており、このことも関係しているかもしれない。これは学生が受持ち利用者宅に3、4時間滞在し、利用者と家族の生活を見て、話を聞いて、肌で感じるというスタイルのものである。短時間の滞在ではあるが、利用者と家族の普段の暮らしを垣間見ることができる貴重な実習体験である。今後も利用者や家族の普段の生活が考えられるような指導が必要であると考える。また、利用者の安全に着目し、その視点が利用者と家族の生活の安定性につながることを学んだということも本研究の特徴であった。しかしながら、在宅看護論の講義の中で強調している<生活者>(頻出語151位)<社会資源>(頻出語108位)といった語の使用頻度が低かった。今後は在宅看護論臨地実習を通して、これらの語の概念化を強化し、着目できるように学生の意識付けを行うことが必要である。本研究は誰が分析しても同じ結果が得られる点で客観性は確保することができたが、学生の主観的体験を形作る重要なファクターである文脈から切り離された語をもとに分析しているため、概念的な分析には限界があった。今後は研究対象者を増やすとともに、人為的にも分析を深めることが必要であると考える。7結論本研究は、中部大学生命健康科学部保健看護学科で、在宅看護論臨地実習を修了した学生を対象に、KHCoderを用いて、研究の趣旨に同意を得られた114名分の在宅看護論臨地実習の「実習のまとめ」を分析して在宅看護論臨地実習の学びを明らかにし、実習方法や実習指導の課題について考察した。その結果、「実習のまとめ」は利用者とその家族を生活者としてとらえ、利用者の安定した療養生活を支援する方法や、他職種と連携をして利用者と家族をサポートする重要性について述べていたことが分かった。「実習のまとめ」は利用者と家族に焦点を当てて記述されており、とくに<家族>が重要な語として意味を持っていた。そして利用者の安全に着目し、その視点が利用者と家族の生活の安定性につながることを学んでいた。しかしながら、連携する具体的な他職種名を想起しにくいことも分かった。謝辞本研究の調査にご協力くださった学生の皆様に深く感謝いたします。参考文献1)厚生労働省(2006):看護基礎教育の充実に関する検討会報告書www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/dl/s0420-13.pdf(2016年9月9日現在)2)御田村相模,深谷由美,篠田晃子他(2014):在宅看護論実習におけるプロセスレコードの有効活用に向けた学習支援リフレクションを実施して-,第44回日本看護学会論文集(地域看護),pp.208-211.3)渡部洋子,角谷あゆみ,山崎ちひろ(2013):在宅看護学実習に求められる対象理解と学習支援-基盤理論の比較とアセスメントツールの検討-,中京学院大学看護学部紀要,3(1),pp.59-75.4)牛久保美津子,横山詞果,川尻洋美他(2012):群馬大学の在宅看護学実習における学生の体験内容と実習指導課題,群馬保健学紀要,33,pp.9-18.5)小路ますみ,小森直美,笹尾松美(2007):在宅看護実習における学びの構造,福岡県立大学看護学研究紀要,4(1),pp.10-18.6)綾部明江,鶴見三代子,長澤ゆかり他(2015):臨床実習後に在宅看護実習を履修した看護学生の学び実習後の「看護観の再考」に焦点をあてて,茨城県立医療大学紀要,20,pp.103-112.7)KHCoderIndexPagehttp://khc.sourceforge.net/(2016年9月9日現在)8)樋口耕一(2004):テキスト型データの計量的分析-2つのアプローチの峻別と統合-,理論と方法,19(1),pp.101-115,2004.―45―助教教育支援機構看護実習センター大谷かがり准教授生命健康科学部保健看護学科小塩康代助手教育支援機構看護実習センター寺本由美子教授生命健康科学部保健看護学科堀井直子在宅看護論臨地実習における学生の学び

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