中部大学教育研究16
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された共起関係から「実習のまとめ」の全体的な特徴を見ることができる。まず登場人物であるが、「実習のまとめ」では<利用者>(1位)と<家族>(4位)の登場が上位である。また、<生活><療養><自宅><家>といった利用者の生活に関する語と、<介護><介護者><負担>など家族に関する語が多い。出現数200以上の語から抽出された共起関係を見ると、訪問看護に関わる人物として<利用者>と<家族>が挙がっている。これらのことから、「実習のまとめ」は利用者と家族に焦点を当てて記述されていると考えることができる。とくに共起ネットワーク図では、<看護>と<家族>が媒介中心性の役割を担う語として検出されており、「実習のまとめ」では<家族>が重要な語として意味を持つ。6.2各目標の特徴各目標別の特徴的な語については、目標1<介護者>、目標2<状態><自分><ニーズ>、目標3<時間>、目標4<情報>、目標5<思う><今回><人>が抽出された。目標1は「訪問看護の利用者とその家族を地域で暮らす生活者として理解すること」である。抽出語の探索にて、<介護者>は<家族><利用者><負担><介護>が多く出現した。4つの語とも、家族の介護負担について述べており、目標1では、家族も生活者として述べる際、家族の介護負担の側面についても着目していると考える。目標2は「利用者が安定した療養生活を継続するための支援の在り方について理解すること」である。抽出語の探索にて、<自分>は<生活><行う><利用者>が多く出現した。特徴的だったのは<行う>であった。学生自身が介護する立場であったらどう考えるかと記述する傾向にあり、自分の立場と利用者の家族を比較検討して持続可能性のある支援の在り方について考えていた。<ニーズ>は<利用者><家族><生活>が多く出現した。やはりここでも利用者の療養生活を考えるに当たり<家族>が重要な語として登場した。利用者支援には家族単位で生活上のニーズをアセスメントすることが重要であると、在宅看護論臨地実習を通じて学んだと考えられる。目標3は「生活に密着した支援について理解すること」である。抽出語の探索にて、<時間>は<訪問>が最も上位であり、次いで<看護><生活><限る><家族>が挙がった。ここでは利用者主体という視点から看護師の限られた訪問時間に触れ、病院では24時間看護師が常駐しているが、在宅看護では1週間のうちのわずかな時間しか訪問できない状況に触れて、利用者やその家族の安全を守るために看護師が何を行わなければならないか、つまり看護師の専門性、とくにプロとしての責任について論じていた。学生は在宅看護論臨地実習を通して利用者の安全について考え、その視点が利用者と家族の生活の安定性につながることを学んだと考える。目標4は「利用者とその家族の生活をサポートするために必要な社会資源や他職種との連携の在り方を理解すること」である。抽出語の検索にて、<情報>は<共有><収集><提供>が多く出現した。目標4の記述では、学生はとくに情報を他職種と共有する必要性に気付いたことが分かったが、<連携>を抽出語検索してみると、具体的な職名が挙がった箇所が28か所と少なかった。目標4については、文字数も46,449と目標別で最も少ない。これらのことから、学生は在宅看護臨地実習を通して、利用者とその家族の生活をサポートするために他職種と連携して情報を共有する重要性に気付いたが、連携する具体的な他職種名を想起しにくいと解釈することができる。6.3その他:探索した抽出語について探索した抽出語はこのほかにも<理解><知る><必要><大切><重要>がある。<必要><大切><重要>については、<学ぶ><考える><感じる>といった実習を通じた学生の動作や作用を表す際に使われた語であったことが分かった。<理解>については、利用者と家族の生活や信念、価値観などを理解することの重要性について述べる際に使われる傾向にあった。各目標別の<理解>の使用数は目標1が最も多かった。目標1のテーマの中に<理解>が含まれていることから、最も使用頻度が高いと考えることもできる。6.4実習方法や実習指導の課題について本研究では、小路ら5)や綾部ら6)の研究と同様に、学生は在宅看護臨地実習を通して利用者とその家族を生活者としてとらえ、利用者の安定した療養生活を支援の在り方について述べていた。また、綾部ら6)と同じく、他職種と連携をして利用者と家族をサポートする重要性についても述べていた。本研究の結果で特徴的だったのは、家族が重要な語として意味を持っていたということである。たとえば、学生が自分の立場と利用者の家族の立場を比較検討して、持続可能性のある在宅看護の可能性について論述していることが分かった。これは実習中に家族の話を伺うチャンスが多かったのではないかと推察するが、在宅看護論臨地実習の目標に掲げられている「利用者―44―大谷かがり・小塩泰代・寺本由美子・堀井直子

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