中部大学教育研究16
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2目的本研究の目的は、中部大学生命健康科学部保健看護学科で、在宅看護論臨地実習を修了した学生を対象に、在宅看護論臨地実習の学びを明らかにし、実習方法や実習指導の課題について考察することである。3研究方法3.1研究対象中部大学生命健康科学部保健看護学科で在宅看護論臨地実習を修了した3回生の「実習のまとめ」114名分を対象とした。女性90名、男性24名であった。「実習のまとめ」とは、在宅看護論臨地実習の最終日に提出する、A4サイズ3枚程度の記録のことを指す。この実習期間は2週間である。「実習のまとめ」の内容は、実習の目標5つについて、それぞれに対して事例を挙げながらどのように体験し何を学んだのかを具体的に述べ、各目標の達成度、今後の課題について記述するものである。3.2調査期間調査期間は、平成26年11月から平成27年7月までである。3.3調査方法について研究の趣旨に同意を得られた114名分(履修者の100%)の在宅看護論臨地実習の「実習のまとめ」を、KHCoderを用いて分析を行った。KHCoderとは、多変量解析を用いてテキストデータを要約し、コーディング規則を作成、探索的に分析を行う無料のソフトウェアである7)。KHCoderは、定型化されていない文章を単語や句ごとに分け、それらの頻出回数や相関関係を分析するテキストマイニングを可能とする8)。本研究の分析には、KHCoderで頻出語リスト50語を抽出し、語の共起を探索するために共起ネットワーク分析を行い、実習の各目標別の特徴的な語を見出すため、変数リストを作成した。また、KWICコンコーダンスで、テキストの中で語がどのように使用されていたかを確認した。なお、これらの分析に用いるJaccard係数の閾値は0.2に設定した。4倫理的配慮本研究は、中部大学倫理審査委員会の承諾を得て行った(承認番号270078)。対象となった学生に対しては、①研究の趣旨、②本人は特定されないこと、③調査結果を研究目的以外には使用しないこと、④プライバシーは守られること、⑤承諾は自由意志であること、⑥協力を辞退しても成績には一切関係がないことを口頭と文章で説明した。そして実習のまとめの複写提出をもって承諾の意思とみなした。5結果調査期間内に在宅看護論臨地実習を修了した学生114名のうち、同意を得られたもの114名の「実習のまとめ」を分析の対象とした。5.1頻出語と共起について分析対象の「実習のまとめ」の総文字数は、280,269語(目標1は70,901語、目標2は66,625語、目標3は48,990語、目標4は46,449語、目標5は47,304語)であった。頻出語(上位50語)を抽出した(表1)。これらの語を①訪問看護に関する用語(生活、看護、療養、訪問、在宅、看護師、介護、ケア、支援、病院、援助、自宅、健康、ニーズ、サービス、受持ち、連携、家)、②訪問看護に関わる人物(利用者、家族、介護者、本人、患者)、③状態を表す名詞(状態、利用、理解、継続、提供、負担、管理)、④状態を表す動詞(行う、考える、学ぶ、感じる、思う、出来る、関わる、見る、知る)、⑤その他(必要、人、実習、大切、時間、自分、情報、重要、今回、環境)に分類した。次に、出現数200以上の語を抽出し、それらの共起関係、すなわち出現パターンの似通った語を調べて、各要素間の関連性を確認した。その結果40語をチェックし、19語を抽出した(利用者、生活、家族、看護、療養、訪問、行う、考える、在宅、必要、看護師、介護、学ぶ、いる、ない、する、ある、なる、できる)(図1)。①訪問看護に関する用語は7個、②訪問看護に関わる人物は2個、③状態を表す名詞は3個、⑤その他は1個であり、①が最も多かった。<いる><ない><する><ある><なる><できる>は、たとえば「~していたが」「両腕にしびれがあり」「動けなくなり」「~することができる」など、学生の文章に頻出する動作や作用を表すときに使われていた。この共起ネットワーク図は、水色、白、ピンクの順に中心性が高くなっており、<看護>と<家族>が媒介中心性(その語がないと情報が伝わらなかったり、意味をなさなかったりする重要な単語であるということ)の役割を担う語として検出された。5.2実習の各目標別の特徴的な語を見出す実習の各目標の特徴的な語を見出すため、変数リストを作成した(表2)。この中から、その目標でしかピックアップされなかった語を抽出したところ、目標1は<介護者>、目標2は<状態><自分><ニーズ>、目標3は<時間>、目標4は<情報>、目標5は<思う><今回><人>が抽出された。―40―大谷かがり・小塩泰代・寺本由美子・堀井直子

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