中部大学教育研究16
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に対応する知識と技術】の2つのグループに大別できた。以下、グループ毎の共起関係と関連する学生の記述内容を述べる。【術後患者のアセスメント】黄色の円のグループでは“術後”、“合併症”、“観察項目”、“アセスメント”、“症状”、“起こる”が同じグループで共起していた。青緑色の円の“患者”、“知識”、“感じる”と破線でも共起していた。以下にこれらの抽出語に関連する学生の記述を示す。「術後の鼻汁は、私はただの鼻汁だと思っていたが、頭蓋内腫瘍摘出術の頭蓋底骨損傷による髄液鼻汁であった。医師記録は髄液漏れありや鼻汁ありと書かれているだけだった。手術の内容から髄液鼻汁であると判断できる知識がなかった。髄液鼻汁により、患者が鼻をすすったりかんだりすることで頭蓋内圧が亢進する可能性や、感染する可能性もある。知識が足りないことで患者に危険を及ぼす可能性もあるため、術後の観察項目をあらゆる面から考え見直す必要があると学んだ。」「深部静脈血栓の発生の機序は理解していたが、では実際に患者が深部症脈血栓になっているかどうかをどう判断するのかという知識が足りなかった。ホ―マンズ徴候の他にも、足の指先に痺れは無いか、また動かしづらさはないかなどの観察項目があることが理解できた。」「全身麻酔を行った患者に対して術中、術後の疼痛緩和を目的として投与される鎮痛剤についての知識が足りないと感じた。私の患者は、術後もフェンタニルという鎮痛剤が投与されていた。この点滴は、麻薬であり主に吐き気、嘔吐、便秘の症状が副作用としてあらわれてくる。患者にも吐き気の症状が出ていたが麻薬による副作用ということを知らず、看護師から助言をしていただくまで気づくことができなかった。患者が吐き気を訴えているのはなぜかを知り、介入していくためには、患者の病態や合併症、投与薬など様々な面から可能性を考えアセスメントしていく必要があると考えた。そのためには、知識を増やしていかなければならないと感じた。」「観察項目が多く、そこから術後の患者の全体をアセスメントし看護に繋げるまでのスピードがとても早く、数時間で変わる状態の変化に置いて行かれないよう事前学習と病棟へ教科書や講義資料、参考書の持参は必須だった。予習にて合併症などの発生機序、症状、予防、対処までの知識は理解していても、その予防、対処に必要な技術とそこにある根拠や注意点など具体的な看護まではついていけなかったことがあった。」【術後患者の反応に対応する知識と技術】青緑色の円のグループでは“患者”を中心に“感じる”、“知識”、“必要”、“解剖”、“自分”、“足りる”が同じグループとして共起していた。これらの抽出語に関連する学生の記述を以下に示す。「患者がとても痛がっておられ、離床を拒否された場面が術後にあった。私は早期離床の大切さやメリットを理解はしていたものの具体的に患者に離床してもらうためにどんな声かけで促しをするのか、どのような行動(歩行は無理でもギャッジアップや座位の促しをするなど)を提案するのかが知識として足りなかったと感じたし、離床の必要性に関しても自分の理解だけでなく患者へ具体的に大切さを感じてもらえるような説明には知識量が至っていなかったと感じられる。」「患者の苦痛を緩和する知識が不足していた。教科書通りに行ったとしても、患者には個人差がある。その個別性を生かしてケアを行うことにより患者に満足してもらえると思った。ADL状況に合わせてベッドの位置を変えたり、クッションを身体の下に置くなどして工夫していくことが必要であると思った。患者の意見をききながら設置することで、患者の苦痛を軽減することができると思った。」「患者との関わりでは、入院期間が短い中での情報収集が難しいと感じた。早い時期から退院指導が行われるため、その患者にはなにを強調して伝えることが必要なのかといった個別性を短期間で見つけることが大切だとわかった。」6考察頻出語分析の結果を見ると、「役立った知識・技術」と「不足していた知識・技術」の半分以上の抽出語が共通していることがわかる。頻出語1位は共通して“患者”であった。学生にとって患者が主体であるという意識が強いと言える。また、術後合併症や気管挿管、観察項目などは、学生が特に役立ったと感じている知識・技術である反面、不足していたとも感じており、今後の講義でも十分に時間をかけて理解を促す必要がある。共起ネットワークの分析結果では、「役立った知識・技術」と「不足していた知識・技術」が非常に似通ったネットワーク図になっている。役立つと不足は、相反する語であるが、学生は同じような場面で「できた」「できなかった」を同時に感じていたことになる。現にそれぞれの記述を見ると、キーワードは共通でもエピソードはそれぞれ異なる。以下にグループごとの考察を行う。【全身麻酔と術後合併症に関する知識】本学の急性期看護学臨地実習では、実習前の事前課題として、①全身麻酔下で手術を受けた術直後患者の身体状況の関連図を書く②術後合併症(無気肺、深部静脈血栓症、出血、イレウス、感染)の標準看護計画―36―荒川尚子・松田麗子・加藤有美・滝沢美世志・江尻晴美・牧野典子

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