中部大学教育研究16
38/128

「社会人基礎知識」の受講状況の有意な主効果がみられた(F(2,349)=22.80,p<.001)。多重比較を行った結果、1年次の単位取得状況においては高群より低群が就職ガイダンスへの参加率が有意に高く、「社会人基礎知識」の成績についてはB/C/E群、S/A群、統制群の順に就職ガイダンスへの参加率が有意に高かった。3.4「社会人基礎知識」受講と単位取得さらに、「社会人基礎知識」の受講が卒業時点までの単位取得過程に及ぼす影響を検討する。1年次の単位取得状況(高群・低群)別に社会人基礎知識の受講状況(S/A群・B/C/E群・統制群)×学年(1年・2年・3年・4年)を独立変数、単位取得数を従属変数とした二要因混合計画の分散分析を行った(図4,5)。その結果、単位取得低群・高群の両群で社会人基礎知識の受講状況×学年の有意な交互作用がみられた(F(6,310)=4.06,p<.001;F(6,384)=5.33,p<.001)。そこで、単純主効果検定を行ったところ、単位取得の低群において1年次のB/C/E群の単位数は、S/A群との有意な差はみられず、統制群よりも有意に少ないことが示された(p<.01)。しかし、2年次になると、B/C/E群の単位数は、統制群やS/A群よりも有意に少なく(それぞれp<.001,p<.01)3年次まで同様の傾向がみられた(それぞれp<.01,p<.05)。また、単位取得高群においては、1年次では単位取得数に受講状況による有意な差は全ての条件間でみられなかった。しかし、2年次になると、B/C/E群の単位数は、統制群やS/A群よりも有意に少なく(ps<.05)、3年次まで同様の傾向がみられた(ps<.001)。なお、4年次では単位取得低群においても高群においても、「社会人基礎知識」の受講状況による単位数の有意な差はみられなかった。また、学年の単純主効果は全て有意であり、全ての条件で学年があがるごとに単位取得数は増加していた(ps<.001)。4考察本研究の目的は、キャリア教育科目「社会人基礎知識」の長期的教育効果について、進路意思決定の観点と学業への取り組みの観点から検証することであった。具体的には、「社会人基礎知識」受講者の特徴を示した上で、授業の受講が進路決定、および、就職ガイダンス参加への影響から進路意思決定への影響について検討し、さらに、1年次から4年次までの単位取得状況との関連性から学業への取り組みへの影響についても検討した。4.1「社会人基礎知識」受講者の特徴「社会人基礎知識」受講者の特徴を検討すべく、受講者と非受講者の1年次の単位取得数を検討したところ、1年次の単位取得数が少ない学生ほど、「社会人基礎知識」を受講していた。その一方で、1年次の単位取得数が多い学生ほど、「社会人基礎知識」を受講していなかった。1年次に単位を多く取得できている学生は、学業面では少なくとも大学に適応できている学生だと考えられる。所属学科における基礎的科目の履修を1年次に順調に終えることで、2年次以降により専門的な科目を順調に履修し、自分の関心のある専門領域についての学びを深めていると考えられる。そのため、全学共通教育科目であり選択科目であるキャリア教育科目「社会人基礎知識」を卒業単位に含める必要性が感じられず、受講しなかったと推察される。一方、1年次に単位を多く取得できていない学生は、学業面での大学適応が十分であるとはいえない。所属学科における基礎的科目の履修を1年次に順調に終え―28―杉本英晴・佐藤友美・寺澤朝子図4単位取得低群における受講状況と単位取得図5単位取得高群における受講状況と単位取得204060801001201401234B/C/ES/A204060801001201401234B/C/ES/A

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る