中部大学教育研究16
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4.6心理学科3尺度の各年度の春学期と秋学期の評定値平均は図7に示す通りで、尺度毎に年度を参加者間、学期を参加者内とする2要因混合分散分析で分析した。4.6.1不安緊張感分析の結果、年度の主効果(F(4,356)=0.81,ns)、学期の主効果(F(1,356)=0.61,ns)、交互作用(F(4,356)=0.70,ns)のいずれも有意でなく、年度間、学期間の差は認められなかった。しかし、図7を見るとわかるように、心理学科学生の不安緊張感の評定値平均も年度、学期を問わず中央値の3.0を大きく下回っていた。したがって、低いまま推移してきたのは望ましいことであり、秋学期に低下しなかったことにも特に問題はないと考えられる。4.6.2統制不能感年度の主効果と(F(4,356)=1.36,ns)交互作用は(F(4,356)=1.40,ns)有意でなかったが、学期の主効果が有意だった(F(1,356)=45.82,ns)。年度毎の学期の単純主効果はすべての年度で有意で(2011年度から順に、F(1,356)=25.13,p<.01;10.31,p<.01;4.91,p<.05;6.12,p<.05;4.88,p<.05)、春学期より秋学期の方が評定値平均が低かった。この結果は、5年間を通じて、春学期から秋学期にかけて統制不能感が有意に低下したことを示しており、1年間のIT教育でコンピュータを思い通りに操作することができるという感覚や信念が養われたことを示す非常に望ましい結果だと言える。4.6.3嫌悪回避感年度の主効果が有意で(F(4,356)=3.12,p<.05)、学期の主効果は有意でなく(F(1,356)=0.16,ns)、交互作用が有意だった(F(4,356)=3.24,p<.05)。学期毎の年度の単純主効果は春学期は有意でなかったが(F(4,712)=1.15,ns)、秋学期では有意で(F(4,712)=5.14,p<.01)、多重比較では2011年度よりも2014年度と2015年度の方が有意に高く(p<.01,HSD=0.53)、2013年度よりも2015年度の方が有意に高かった(p<.05,HSD=0,44)。年度毎の学期の単純主効果は2011年度だけ有意で(F(1,356)=2.32,p<.01)、春学期から秋学期にかけて低下していた。この結果は、2011年度は1年間の教育後に嫌悪回避感が明確に低下したが、それ以外の年度には変化しなかったこと、そして、2014年度と2015年度の2年間の秋学期の嫌悪回避感が、春学期より高まったわけではないものの、2011年度や2013年度より高かったことを示している。以上から、心理学科の新入生のもともと低かった不安は、5年間、春学期から秋学期にかけて変化せず低いままで、統制不能感は5年間とも一貫して1年間の教育後に低下したことが明らかとなり、これらについては特に問題はない。しかし、コンピュータに対する嫌悪回避感は様相がやや異なる。図7を見るとわかるように、嫌悪回避感の評定値平均は5年間を通じて中央値である3.0を下回っており、必ずしも高くはないが、過去2年間の秋学期の嫌悪回避感が他の年度に比べても高かったことは問題である。冒頭に書いたように、統制感が高まれば、嫌悪感は低下するのが普通である(Simsek,2011)。コンピュータ操作能力が高まっても嫌悪感が低下しなかったということは、単にIT教育により一層力を入れて学生の操作能力を高めるという方法では学生のコンピュータに対する愛着は高まらないことを示唆している。よって、新入生に対しては、これまでのIT教育以外に、コンピュータを操作したいと思うようなアトラクティヴな教育コンテンツを取り入れるなどの工夫をし、コンピュータに対する肯定的感情を育てる必要があるのかもしれない。―22―図7心理学科の3尺度の春学期と秋学期の評定値平均の5年間の推移水野りか・GregoryKing・柳朋宏・渡部展也・柳谷啓子・尾鼻崇・永田典子・嘉原優子・山本裕子

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