中部大学教育研究16
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4.5日本語日本文化学科日本語日本文化学科の各年度の春学期と秋学期の各尺度の評定値平均(図6)を、年度を参加者間、学期を参加者内とする2要因混合分散分析した。4.5.1不安緊張感分析の結果、年度の主効果と交互作用は有意でなく(F(4,270)=0.98,ns;F(4,270)=0.31,ns)、学期の主効果は有意だった(F(1,270)=8.22,p<.01)。年度毎の学期の単純主効果は2014年度のみ有意だった(F(1,256)=4.37,p<.05)。この結果は、2014年度のみ、春学期から秋学期にかけてコンピュータを操作する際の不安や緊張が低下したことを示している。グラフに示したように、2014年度の春学期は調査した5年間のうちで最も不安緊張感が高く、それにより有意差が生じやすくなった可能性は十分に考えられる。しかし、他の学科同様、日本語日本文化学科の他の年度の不安緊張感の評定値平均は著しく低かったため、低下しなかった年度も特に問題はないと考えられる。以上の結果、新入生はコンピュータに対する不安が少なく、また1年間の教育を通じて不安を低下させるようになったことを示すといえよう。4.5.2統制不能感年度の主効果は有意でなく(F(4,270)=1.62,ns)、学期の主効果と交互作用は有意だった(F(1,270)=38.94,p<.01;F(4,270)=3.02,p<.05)。年度毎の学期の主効果は、2012年度は傾向があり、2013年度、2014年度は有意で、2015年度は傾向があった(この順でF(1,270)=3.14,p<.10;9.04,p<.01;32.85,p<.01;3.58,p<.10)。学期毎の年度の単純主効果は春学期でのみ有意で(F(4,540)=3.59,p<.01)、2014年度と2011年度、2014年度と2012年度、2015年度と2015年度の間に有意差が認められた(p<.05,HSD=0.46)。グラフに示したように、2012年度と2015年度は春学期から秋学期にかけて統制不能感が低下する傾向が認められただけだったが、2013年度と2014年度は、それが明確に低下したことがわかる。また、2014年度の春学期は、統制不能感が2011年度、2012年度、2015年度よりも高かったが、秋学期になると他の年度の秋学期と差がなくなっている。統制不能感がいずれの年度も低下しているのは望ましいことであり、1年間の教育の影響によるものと考えられる。4.5.3嫌悪回避感年度の主効果と学期の主効果は有意でなく(F(4,270)=0.81,ns;F(1,270)=1.98,ns)、交互作用は有意で(F(4,270)=3.16,p<.05)、年度毎の学期の単純主効果は2014年度のみ有意だった(F(1,270)=11.08,p<.01)。この結果は、コンピュータに対する嫌悪感や使用を避ける態度が2014年度のみ春学期から秋学期にかけて低下したことを示している。2014年度の春学期は特に嫌悪回避感の評定値平均が他の年度よりも高かったため、秋学期との差が生じたと考えられる。以上の結果、2014年度を除いては、いずれの年度も学期ごとの差がなく、教育の影響による変化が認められなかったといえよう。日本語日本文化学科の新入生は、不安・緊張感よりも嫌悪感が強く、嫌悪感よりも統制不能感が強い。理由は不明だが、特に2014年度の入学直後が高かった。しかし、秋学期になると統制不能感が低下し、他の年度とあまり変わらなくなった。日本語日本文化学科では、高度なIT知識や技術を必要とする専門教育科目はないが、初年次教育としてTORA-NETPortalを使い、日常生活におけるコンピュータの有効活用を指導している。春学期から秋学期になると、多少なりともコンピュータに対して肯定的になれるのは、こうした指導が功を奏しているのかもしれない。―21―図6日本語日本文化学科の3尺度の春学期と秋学期の評定値平均の5年間の推移新入生のコンピュータ不安低減へのIT環境・教育の効果の検討新入生のコンピュータ不安低減へのIT環境・教育の効果の検討

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