中部大学教育研究16
30/128

4.4コミュニケーション学科コミュニケーション学科の各年度の春学期と秋学期の各尺度の評定値平均を図5に示した。以下、尺度毎に年度を参加者間、学期を参加者内とする2要因混合分散分析で分析した。4.4.1不安緊張感分析の結果、年度の主効果は有意でなく(F(4,292)=1.10,ns)、学期の主効果は有意で(F(1,292)=9.62,p<.01)、交互作用は有意でなかった(F(4,292)=1.47,ns)。年度毎の学期の単純主効果は、2013年度のみ有意で(F(1,292)=10.22,p<.01)、2014年度には傾向があった(F(1,292)=3.49,p<.10)。この結果は、2013年度のみ春学期よりも秋学期の不安緊張感が顕著に低下し、2014年度には低下傾向が認められたことを示す。しかし、これは、他年度に比してこれらの年度の春学期の不安や緊張が元々高かったためと考えるのが妥当であろう。他の年度も全般的に評定値平均は著しく低いため、低下しなかったことにも特に問題はない。4.4.2統制不能感上の不安緊張感と同様、年度の主効果は有意でなく(F(4,292)=1.26,ns)、学期の主効果は有意で(F(1,292)=23.24,p<.01)、交互作用は有意でなかった(F(4,292)=1.43,ns)。年度毎の学期の単純主効果は2011年度を除いてすべて有意だった(2012年度から順に、F(1,292)=3.93,p<.05;9.40,p<.01:7.04,p<.01、8.58,p<.01)。この結果は、2011年度を除いた4年間、春学期よりも秋学期の方がコンピュータの統制不能感が低下したことを示している。総じて1年間にわたる学科のIT教育によって学生たちがコンピュータ操作にそれなりの自信をもつに至ったということである。4.4.3嫌悪回避感年度の主効果(F(4,292)=1.68,ns)、学期の主効果(F(1,292)=2.16,ns)、交互作用(F(4,292)=0.52,ns)のいずれも有意ではなかった。この結果は、コンピュータへの嫌悪感や操作回避の気持ちが5年間を通じて1年間のIT教育を経ても低下しなかったことを示している。以上から、コミュニケーション学科の入学生のコンピュータ操作への不安や緊張はもともと低く、IT教育を経て変化がないかさらに低下・低下傾向を示しているため問題はない。統制不能感に関しては、2011年度以外は、一貫して教育を経て低下するという望ましい結果が出た。これは、2012年度から学科が、それまで総合情報センター提供によるBlackboard社のe-Learningシステム上で構築していた初年次教育用の大量の復習問題や課題を大学のPortalサイトTORA-NET内に移行し、全ての連絡も同サイトのWEBメールに切り替えたことに起因する可能性がある。この移行で学生らは履修登録や大学からの連絡事項の確認などとも合わせて、頻繁にPortalサイトを利用することでコンピュータ操作に馴れ親しんだ結果、秋学期における統制不能感の低下に至ったことが考えられる。一方、嫌悪回避感が一貫して1年間のIT教育を経ても低下しなかったことは、教育による統制不能感の低下と考え合わせれば、説明を要する。コミュニケーション学科は情報を扱う学科であり、多くの科目でコンピュータ上の作業を伴う課題を課し、学生らはその出来で常に評価されている。したがって、「コンピュータに対する嫌悪感や操作したくないという感覚」は、「課題に対する嫌悪感や勉強したくないという感覚」の反映である可能性がある。今後は従来のIT教育に加えて、授業課題にゲーミフィケーションなどを取り入れることで、コンピュータとの親和性を高める工夫が必要かもしれない。―20―水野りか・GregoryKing・柳朋宏・渡部展也・柳谷啓子・尾鼻崇・永田典子・嘉原優子・山本裕子図5コミュニケーション学科の3尺度の春学期と秋学期の評定値平均の5年間の推移

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る