中部大学教育研究16
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4.3歴史地理学科歴史地理学科の各尺度の評定値平均を年度間及び教育前後で比較した(図4)。そのために、先と同様、年度を参加者間、学期を参加者内とする2要因混合分散分析を行った。4.3.1不安緊張感分析の結果、年度の主効果は有意でなく(F(4,317)=0.30,ns)、学期の主効果は有意で(F(1,317)=8.35,p<.01)、交互作用は有意でなかった(F(4,317)=1.11,ns)。次に年度毎の学期の単純主効果を求めたところ、学期の単純主効果は2011年度のみ有意で(F(1,317)=5.88,p<.05)、2013年度には傾向のみ認められた(F(1,317)=2.89,p<.10)。この結果は、2011年度のみ春学期から秋学期にかけてコンピュータを操作する際の不安や緊張が低下し、2013年度にはその傾向があったことを示している。ただし、図4を見ると明らかなように、歴史地理学科の不安緊張感の評定値平均は他の学科同様全般的に著しく低かったため、秋学期に低下しなくとも特に問題はないと考えられる。4.3.2統制不能感この尺度でも上と同様、年度の主効果は有意でなく(F(4,317)=1.50,ns)、学期の主効果は有意で(F(1,317)=17.96,p<.01)、交互作用は有意でなかった(F(4,317)=0.87,ns)。前項と同様年度毎の学期の単純主効果を調べたところ、2014年度と(F(1,317)=6.11,p<.05)、2015年度に有意差が認められた(F(1,317)=10.04,p<.01)。この結果は、2014年度と2015年度だけ、春学期よりも1年間の教育の終了した秋学期の方が、コンピュータに対する統制不能感が低下したことを示している。総務省の「青少年インターネット・リテラシー指標等」によれば2013年度はスマートフォン保有率が大幅に増加した年であるとされている。あくまで可能性ではあるが、2013年度からの統制不能感の増加傾向は、スマートフォンの普及によって相対的にPCに触れる機会が減った影響によるとも考えられる。もっとも、必ずしもすべての学科に共通してこの傾向があるわけでは無いので、原因は他に求めるべきかもしれない。少なくとも秋学期の値の方が低いことは望ましい傾向であるといえる。4.3.3嫌悪回避感年度の主効果(F(4,317)=1.07,ns)、学期の主効果(F(1,317)=1.01,ns)、交互作用の(F(4,317)=0.54,ns)、いずれも有意ではなかった。この結果は、学生のコンピュータを嫌う感覚や操作したくないという気持ちが5年間を通じて春学期から秋学期にかけて低下しなかったことを示している。学科ではレポート作成以外にPCに触れる機会が少なく、継続的なPCの活用がないことが影響している可能性がある。このように歴史地理学科の場合は、いずれの尺度においても、春学期・秋学期ともに似た増減傾向を示している。そのなかにあって、2013年度を最低とする秋学期のU字型のカーブが特徴的である。2013年度を境とする変化についてはスマートフォンの影響も想定されるが、その原因を明らかにするには至らなかった。2013年度以降、不安緊張感や統制不能感の学期間の変化が有意となっており、若干ではあるが学期間に習熟度が上がったと捉えることもできる。ただし学部の傾向と同様、嫌悪回避感については有意ではなく、慣れはしたがPCに対する苦手意識までは改善されていない様子が見て取れる。苦手意識の克服は今後の課題である。―19―新入生のコンピュータ不安低減へのIT環境・教育の効果の検討図4歴史地理学科の3尺度の春学期と秋学期の評定値平均の5年間の推移

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