中部大学教育研究16
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3方法3.1調査対象者1年の変化を調べるためには、春学期の開始直後と秋学期の終了直前の2回の調査の双方に参加した新入生のデータだけを分析する必要がある。そこで、表1には、毎回の調査の参加者数ではなく、分析の対象となった、春学期と秋学期の双方の調査に参加した人数を掲載した。3.2質問項目大学生用のコンピュータ不安検査(小川・浅川,1991)の20項目(図1・表3参照)で、下記Web調査システムにより、被調査者毎に項目の呈示順はランダムにされた。3.3手続き水野・松井・清河(2011)の構築したWeb調査システムQCASで作成したWeb調査を実施した。このWeb調査はPCでも携帯電話、スマートフォン、タブレットでも回答することができるもので、1.いつでもどこでも調査を実施することができるユビキタス性、2.調査用紙を印刷する必要がない経済性、3.用紙の回収やデータ入力等の手間がかからない省力性を有しており、同じ時、同じ場所に集合させることが難しい5学科の新入生の一斉調査に適していた。各学科は新入生に、情報教室で実施する場合はPCで、そうでない場合は携帯電話やスマートフォン・タブレット等で図1に示すような調査画面にアクセスさせ、各項目に「1.全くそう思わない」から「5.非常にそう思う」までの5件法で回答させた。送信された回答はテキスト形式でサーバーに保存された。4結果と考察4.1人文学部全体4.1.1各項目の平均評定値の春学期から秋学期への変化各項目の評定値を、年度を参加者間、学期、及び、項目を参加者内とする3要因混合分散分析で分析した結果、学期と項目の主効果は有意だったが(この順で、F(1,1474)=53.54,p<.01;F(19,28006)=404.57,p<.01)、年度の主効果は有意でなかった(F(4,1474)=0.921,ns)。年度の主効果のみ有意でなかったので、年度と他の要因との交互作用を見てみたところ、年度と項目の交互作用は有意だったが(F(76,28006)=1.47,p<.01)、項目毎の年度の単純主効果が有意だったのは7番の1項目だけだったことがわかった(F(4,29480)=3.78,p<.01)。この結果は、5学科を合わせた分析では年度間の差が全般的に不明瞭であったことを示している。これは、学科によって評定値が高い/低い年度が異なるため、合算されたことで差が顕在化しなくなってしまったためだと考えられる。そこで、年度間の差は後半の学科毎の分析に譲り、ここでは年度を込みにして、1)平均評定値に項目を並べ替え、肯定的項目や否定的項目の順位が春学期と秋学期で異なるか否か、2)各項目の平均評定値が春学期から秋学期にかけてどのように変化したかを調べた。まず、肯定的項目や否定的項目の順位が春学期と秋学期で異なるか否かを見るために、春学期と秋学期の各々で平均評定値の高い順に質問項目を並べ替えた。その結果が表2である。網かけの項目が否定的項目、それ以外が肯定的項目である。したがって、網かけの項目は下の方、そうでない項目は上の方にあるのが望ましい結果である。これを見るとわかるように、春学期には、No.6「操作を失敗するのではないかといつも恐れている」という否定的項目が上位に位置しているが、秋学期には否定的項目のすべてが下位に位置し、より望ましい結果になっていることがわかる。次に、各項目の春学期と秋学期の平均評定値に差があるか否かを調べるために、学期と項目を参加者内要因とする2要因分散分析を行った。その結果が表3で、平均評定値は、肯定的項目では春学期より秋学期の方が低い方が、網かけの否定的項目では春学期より秋学期の方が高い方が、望ましい変化である。この視点で見ると、有意差が認められた16項目中15項目が望ましい変化を示し、唯一No.1「コンピュータの操作は楽しくない」という項目でだけ秋学期の方が平均評定値が高まるという望ましくない変化が認められたことがわかる。このように、ほぼすべての項目で望ましい変化が認められたことは、人文学部の1年間のIT教育が、学生のコンピュータ不安の低減に極めて有効であったことを示している。4.1.23つのコンピュータ不安尺度の評定値平均の春学期から秋学期への変化個々の項目の評定値の平均は平均評定値と記したが、尺度の場合は複数項目の評定値の平均であるため、評定値平均と記して区別するものとした。前項で述べた通り、人文学部全体では年度間の相違が不明瞭だったため、年度を込みにして3尺度の春学期から秋学期への変化を検討するものとした。本研究では、水野他(2010)が小川・浅川(1991)の20項目を因子分析することで作成し、信頼性が高いことを確認した3つのコンピュータ不安尺度を利用して分析を行った。1つ目の不安緊張感尺度はコンピュー―14―水野りか・GregoryKing・柳朋宏・渡部展也・柳谷啓子・尾鼻崇・永田典子・嘉原優子・山本裕子

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