中部大学教育研究16
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含むが、学生参画のすべてがFDの推進を目的としているわけではない。2)立命館大学のFDの定義は、2007年5月の教学対策会議で、①<Whatfor>建学の精神と教学理念、学部・研究科の教育の目標を実現するための、②<What>すべての日常的な教育改善活動で、③<Who>教員が職員と協働し、学生の参画を得て実施し、④<How>PDCAサイクルで検証するものと定められている。同様に他大学においてもFDの定義やミッションを独自に策定する動きが見られ、たとえば法政大学では、「『自由と進歩』の建学の精神に基づく教育理念と教育目標を達成するためになされる、教育及び学びの質の向上を目的とした教員・職員・学生による組織的・継続的な取組みを、FD(FacultyDevelopment)と定義する」となっている。3)「学生参画型FD(学生FD活動)」も一般的な用語ではないが、木野茂編著『大学を変える、学生が変える-学生FDガイドブック』で使用されているほか、昨今多くの大学現場で用いられているため、ここではその用語を用いる。4)もっとも大きな問題点は、すべての活動をFDと関連づけている点であり、ピア・サポーターとの区別がついておらず、教職員の指導や協働を軽視して自発的、自主的な組織であるとしている点である。詳しくは沖、2013年;沖、2015年を参照のこと。5)学習共同体には、大学院の専門ゼミ等に見られる「学問/教育共同体」と、ともに学び合う存在としての学生と教員が議論を行っていくという教育の在り方や、学部間・大学間・大学と地域が連携し、それぞれのリソースが生かされながら学びが進められるという教育の在り方を表す「学びの共同体」がある(杉原、2006、164-165頁)。6)実践共同体は、レイヴとウェンガーの「正統的周辺参加」論において用いられた概念で、実践共同体においては、新参者が熟練者による作業を見たり周辺的な作業を行ったりしながら、熟練者からの特別な指導もなく学習し、次第に十全的な作業に携わることができるようになっていく過程が明らかにされている(Lave&Wenger1991=1999)。7)学生が卒業時に達成すべき能力として、コミュニケーション、分析、問題解決、意思決定における価値判断、社会的インタラクション、グローバルな視野の発達、効果的な市民参加、美的な関わりを挙げ、それらを初級(1、2レベル)、中級(3、4レベル)、上級(5、6レベル)の6段階に分けたマトリクス(長期的ルーブリック)を用いて、各レベルに対応する学科の科目群をカリキュラム・マップで示すこととともに、学生にその達成度を自己評価させることによって、最終的には大学が求める上級レベルの能力を卒業時に達成させる仕組み(沖、2016年、132-133頁)。8)PALリーダーとなることで、リーダーシップやチームワーク、コミュニケーション、ファシリテーションやコーチングなどの35時間の訓練を受け、チームワークが必要とされるときの自信を得るとともに、自らの履歴書を強化する貴重な経験を得る。また、自らが受講する科目の理解を深め、他機関からの者も含めたPALリーダーのネットワークの会議やイベントへの参加が認められる。このような内面的なもの以外にも、証明書の発行やさまざまな表彰が得られるほか、PALに従事している期間中、支援活動1回につき7.85ポンドの給与も支払われる。9)「プロデューサーとしての学生」の取組はイギリスのリンカーン大学の事例で、学士課程の学生に実際の研究プロジェクトに従事させるもの。また、「学者としての学生」の取組はアメリカのマイアミ大学の事例で、25の学部・学科がそれぞれのディシプリンに応じて実際的かつ実践的なプロジェクトを展開している(HEA,2016,p.44)。10)「学びと成長調査」は2016年度より、これまで立命館大学教育開発推進機構のIRプロジェクトが担っていた「学びの実態調査」を教学部が発展的に引き継ぎ、全学的に実施する大学生調査である。11)全学協議会は、立命館大学において、学生自治組織である学友会の代表、院生自治組織である院生協議会の代表、教職員組合、立命館生活協同組合(オブザーバー)、大学(常任理事会)が4年ごとの学費改定方式の見直しとあわせて、これまでの教育研究の成果を点検し、教学等の今後の方向性を確認する会議である(RS学園通信2015より抜粋)。12)学部長等大学側3名と各学部学生自治会等学生側2名から構成されるのでこのように呼ばれた。現在は、教学懇談会など各学部での呼称は異なる(中村、2015年、64-67頁)。13)立命館大学では、戦後まもなくから、理事会、教授会、学友会・院生協議会(学生や院生の自治会)、教職員組合を含む全構成員による大学の自治制度を構築してきた。代表的な柱としては総長公選制と全学協議会があり、いずれも学生代表が意思決定に参加する(平岡、2015年、68-69頁)。14)学生は、自らがコンサルタントとして従事するコースには履修登録しないが、以下の7点の責任を担―10―沖裕貴

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