中部大学教育研究16
15/128

生自治会の参画などを含めて、授業やカリキュラム、教育の改善のために学生の声を聞くすべての活動が挙げられよう。立命館大学における学生自治会や院生協議会との五者懇談会12)など、全構成員自治13)のための機能的な制度もこれに含まれる可能性がある。また、学生FDスタッフの活動としてよく知られる「しゃべり場」などの活動や北九州市立大学で学生自治会が行っている教務課との懇談会「カリキュラムを考える会」の活動も、授業や教育の改善のために学生、教職員が共に協議するもので、制度的にその成果が教育改革に活かされることが保障されているならば(図4において上の4つ目までのレベルに達しているならば)、この分野に含まれる活動だと推察される。一方、学生連携に絡む活動例としては、アメリカのブライン・モー大学(BrynMawrCollege)の「学習者でありかつ教師としての学生(studentsaslearnersandteachers:SaLT)」と呼ばれるプログラムが挙げられよう。そこでは学士課程の学生を教員の教育診断(授業コンサルティング)に活用している。この試みは学生、教員にFDのより洗練されたモデルを再構築する稀有の機会を提供し、教員・学生双方の学習体験を深化させ、教員と学生に共有されたものとしてそれらの学習体験に対する責任を練り直すものとなっている14)。また、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(UniversityofBritishColumbia)でも大学からの基金に基づいて「プロデューサーとしての学生(studentsasproducers)」と呼ばれるプロジェクトが行われている。2013年の秋時点で延べ100の授業を巻き込み、約34,000名の学生が履修する巨大プロジェクトとなっており、学生と教員が協働して、現在の受講生、将来の受講生、そしてオープン・オンライン・コースなどを制作する場合はより広いコミュニティのためにさまざまな学習教材を制作している。たとえば「フレキシブル学習プロジェクト」では、教員が学生に、物理学の反転学習で用いる事前学習課題に関わって、事例やクリッカーの質問、投影図などの学習教材を開発するように求め、それらの教材を実際に授業で、あるいは(学生の許可を得て)その後の授業で事前学習教材の概念を説明する際に用いている。このプロジェクトの目的は、単なる反転学習を超えて、すべての学生が教員と協働してお互いの役に立つ教材を創造する真の学習共同体に向けて進めていくことであるという(McCabe,2013)。あるいはイギリスにおいては、国家主導の学科カリキュラム・チームの正式なメンバーとして学生を招じている事例もある。2009年に地理学、地球環境科学に関する学科のカリキュラムを検討する国家主導のチームに学生が1、2名、正式な委員として参画し、創造性や新たな視点を提供するキーとなる存在になっているという。これらの実践は、HEAによってここ5、6年取り組まれてきた「アカデミーを変える(changeacademies)」プロジェクトに基づいて実施されたもので、その総括として「学生を受け入れることは非常に効果的であり、正直に言って、彼らは他のどんな委員と比べても遜色のない十二分の役割を果たしてくれた」と称賛の言葉が残されている。国内においては唯一、土持がアメリカのブリンガム・―7―日本の高等教育における「学生参画」の概念の再整理の試み図4カリキュラム設計における学生参加の階段(Bovill&Bulley,2011,p.5,adaptedfromArnstein,1969)

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る